地方の視点からみた「骨太の方針2006」

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2006年07月26日

  • 星野 菜穂子
7月7日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(以下、骨太の方針2006)が閣議決定された。同方針については、既に各方面からさまざまな見方が示されているものの、再度、地方の視点に立ってみることにしよう。

「骨太の方針2006」では、今後10年における優先課題の一つとして、財政健全化へ向けての中期ビジョンが示されている。特に、小泉内閣の財政健全化第Ⅰ期(2001~06年度)に続く第Ⅱ期(2007~10年代初頭)では、2011年度に国・地方の基礎的財政収支を確実に黒字化する、と目標設定が行われている(※1)。この取組の上で、地方については、国と地方の相互理解の下で財政健全化目標に向けその実現のため協力するとあるが、具体的な歳出削減分野の一つとして地方財政が取り上げられている。主な内容は、地方公務員の定員純減(△5.7%)と地方単独事業を中心とした削減である。注目を集めた地方交付税改革については「現行法定率は堅持」とあるなど、骨太方針作成前に激しく議論された、法定率引き下げ、地方交付税総額削減の明言は回避された形となっている。地方交付税の配分も、算定の簡素化への言及があるとはいえ、「地方団体の財政運営に支障が生じないよう必要な措置を講じつつ」とあるなど、相次いで打ち出されていた大胆な改革案は退いた印象である。しかし、平成19年度予算に向けては、メリハリの効いた歳出見直しの方向性が打ち出されており、地方財政に関しては、依然、交付税を含む厳しい削減圧力が働いていることには違いない。

この他、地方分権に伴う地方財政改革についても、「関係法令の一括した見直し」「国と地方の役割分担の見直し」、また歳入改革では「地方分権を一層推進するため、地方税源の充実を図る」といった言及はあるものの、これまでの活発な地方分権に向けての改革論議が同方針に十分に反映されたとは言い難い。市場関係者に関心の高い再建法制等の在り方も含め、多くは今後の具体策に持ち越されたといえよう。

骨太方針決定の後、全国知事会は「地方分権改革の今後の進め方について」を発表し、「地方分権推進・一括法」の制定等、第二期改革の基本戦略や個別課題(税源配分のあり方・消費税について、地方交付税等について、再建法制等について、公営企業金融公庫廃止後の仕組みについて、生活保護制度について、道路特定財源について)への対応を示している。今後に持ち越された地方分権・地方財政改革に関わる検討課題は、なお注目されよう。

(※1)具体的には、2011年度までの基礎的財政収支の黒字化を達成するために解消すべき要対応額を16.5兆円程度とし、少なくとも11.4兆円以上は歳出削減によって対応、残る2~5兆円は歳入改革によって対応するとしている。なお、続く第Ⅲ期(2010年代初頭~2010年代半ば)は、収支の黒字化達成の後も、国・地方を通じ収支改善努力を継続し、債務残高GDP比の発散を止め、安定的に引き下げることを確保する、という目標設定がなされている。

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