予想以上に長く深い液晶パネルの市況下落局面

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2006年07月06日

  • 杉下 亮太
05年秋の時点で、06年前半は液晶パネル市況が軟化するという見方がコンセンサスであった。実際、17インチモニターパネル価格は05年11月から下落が始まり、年が明けると季節的な需要減退の影響でパネル需給が悪化、その後も価格下落は続いた。しかし、市況軟化の期間と程度については、当初予想よりも長く深くなっている。これはPC需要が想定を下回ったことと、サッカーW杯需要をにらんで一部のパネルメーカーが過剰なテレビパネル生産を続けたことが背景にある。PC需要は、欧州でビジネス用ノートPCの需要が減速した上に、CPUの大幅値下げを見越した買い控えが発生した。液晶テレビ需要は想定通りほぼ前年比倍増ペースで拡大しており、米国などでは品薄とも伝えられているが、パネルについては液晶テレビ需要を大きく上回るピッチで増産が続いた。この結果、PC用パネル価格は概ね上位メーカーのキャッシュコスト近辺まですでに下落した。テレビ用パネルも価格は想定以上に下がった。06年末の32インチパネル価格は当初想定のUS$450に対して、6月後半の時点でUS$410となっている。

このうちPC用パネルについては、市況底打ちが視野に入ってきたと考えている。過去の例では、パネル価格が上位メーカーのキャッシュコスト近辺まで下がったときに底打ちしている。また、PC需要も季節的に上向く時期に差し掛かっており、PC用パネルの需給バランスは今後大きく改善に向かう可能性は高い。

一方、テレビパネルについては、06年7-9月期も下落が続くだろう。6月末時点でテレビパネルの在庫は適正水準を5割強上回っていると推測される。5月中旬頃から多くの液晶メーカーは稼働率を落としている様子だが、在庫が適正水準まで戻るには3ヶ月程度の生産調整が必要になる見込みである。このため、テレビパネル価格は8月頃までは下落が避けられないだろう。32インチパネルの価格は7-9月期中にUS$400を割り込むことが確実視される状況といえる。

このように、PC用パネルの低採算を補っていたテレビ用パネルも、マージンは大幅に悪化している。32インチパネルを例にとると、上位メーカーでも7-9月期は採算割れに陥る可能性が高い。パネルメーカーは、部材メーカーに対して部材価格の値下げ要請を一段と強めるとともに、設計変更(部材搭載点数の削減や過剰スペックの見直し)を行なうことで、コスト削減を急ぐことになるだろう。設備投資は今のところ具体的な見直しは生じていない模様だが、一部では延期・計画変更を余儀なくされる可能性が高い。

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