現代自動車会長逮捕のインパクト

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2006年06月22日

  • 黒坂 慶樹
4月28日に現代自動車の鄭夢九会長が逮捕されて以来現代自動車が奮わない。系列会社を使って不正資金を作っていたことなど逮捕の理由だが、改めて会長を 中心とした財閥経営の弊害が垣間見られる。数ある財閥の中でも、特に現代・起亜自動車グループは鄭夢九会長が重要事業の決定権を持っており、ワンマン経営 で知られる。

足許の韓国は、現代・起亜自動車の不買運動などは起こっておらず、今後も起こる可能性は低いだろう。国内自動車販売市場の3/4は同グループ(起亜自動車 の筆頭株主は現代自動車)によって占められており、韓国の自動車産業は同グループを避けては成り立たないためだ。2006年1-5月の累計出荷台数(2社 合計)は前年比+7.5%と高い伸びである。しかし、一方で現代自動車が数年来打ち出してきた成長シナリオは会長逮捕以降ほぼ止まっている。現代・起亜自 動車の海外工場の建設や、現代製鉄の高炉新設事業などだ。ウォン高が急速に進む中、一刻も早く立ち上げたい海外工場だが、現代自動車のチェコ工場や起亜自 動車のジョージア工場の計画は無期限延期になっている。現代製鉄は新規に高炉を作る計画を発表しているが、原材料確保や用船、設備購入が進んでいない模 様。

今後は、(1)財閥経営からの決別、(2)保釈による会長の復権、の2つのシナリオが考えられるが前者の可能性は低いだろう。これまでも全て会長のリー ダーシップにより成り立ってきた会社であり、財閥経営から決別できるなら既に経営は正常化しているためだ。可能性が高い会長の復権であるが、そうなればあ まり先行きが明るいとはいえない。石油精製大手のSKも会長が逮捕後復権したが、敵対的買収のターゲットになり会長の辞任とガバナンスの改善を要求された 過去がある。いずれのシナリオでも財閥に依存する経営は限界があり、ガバナンスを改善する機宜を得ているのである。

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