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「サービス・サイエンス」普及の鍵

2006年06月16日

高林 章夫

最 近、「サービス・サイエンス」(※1)なるものが注目を集め始めている。

「サービス・サイエンス」とは、「サービス」が持つ

無形性:その形が目に見えないこと
変動性:受ける人の感覚によってその評価が変わること
同時性:生産と消費が同時であること

等の特徴を考慮にして、その評価を定量的、数理的に行うアプローチと定義することができる。

「サービス・サイエンス」の概念は2002年に米IBMのアルデマン研究所(基礎研究所)と、UC Berkeleyの教授であるヘンリー・チェスブローらによる、「サービス」を社会工学のシステムの見地から研究する取り組みから生じたといわれている。 2002年12月には、IBMのアルデマン研究所を中心に、IBM Research内にサービス研究のグループが設立され、本格的な研究が開始された。

「サービス・サイエンス」が注目を集めるようになったきっかけは、米国の競争力協議会(Council on Competitiveness)が2004年12月に発表したレポート「Innovate America」にあるといわれている。

このレポートは、人材、投資、基盤の観点から国家としてのイノベーション戦略の重要性を主張しているものであり、その中で「サービス」に対するイノベー ティブなアプローチの一つとして「サービス・サイエンス」という言葉が記載されている。

海外では米国のビジネス・スクールを中心に「サービス・サイエンス」の研究、教育活動が活発になってきており、UC Berkeley、MIT(マサチューセッツ工科大学)、Stanfordなどが「サービス・サイエンス」のプログラムを提供し始めている。

また日本においても、学会におけるセッションや産官学が参加したシンポジウムの開催など、その動きが活発になりつつある。

では、「サービス・サイエンス」の研究課題として挙げられているものには、どのようなものがあるのであろうか?研究課題として挙げられているものの例とし ては、

サービス・イノベーション・マネジメント
「サービス」の効率を上げるテクノロジー
「サービス」の価格設定
「サービス」の生産性の測定
サービス・プロジェクトのリスク・マネジメント

等がある。これらを見てみると、「サービス」という共通のキーワードで括られてはいるが、その内容は多岐に渡っている上、いずれも抽象的なレベルを脱して おらず、「サービス・サイエンス」の具体像をイメージしにくいという感は否めない。

「サービス・サイエンス」は、概念が提唱されてから日も浅いこともあり、すぐに目覚ましい発展を遂げ、日本のビジネスに急激に浸透することは考えにくい。 しかし、世の中の産業構造が製造業からサービス業にシフトしている現実を鑑みれば、勘と経験に頼っていた「サービス」に対して定量的、数理的な評価、分析 を行う為の枠組みである「サービス・サイエンス」への潜在的なニーズが高いことは、想像に難くない。

「サービス・サイエンス」普及の鍵は、分析の対象とする「サービス」の特徴を的確に捉え、オペレーションズ・リサーチ等の数理的な意思決定手法と結びつけ た評価・分析事例を提供していくことによって、「サービス・サイエンス」の具体像をいかにわかりやすく提示できるかにかかっているといえよう。

(※1)「サービス・サイエンス」は、”Services Sciences, Management and Engineering”を簡略化して表現したものである。

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