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中国の過剰設備問題への処方せん

2006年06月02日

経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

中国は投資に過度に依存した経済成長を続けている。2001年~05年の固定資産投資は29.5兆元(約400兆円)と、00年までの20年間の累計額をわずか5年で上回ったほどである。この結果、製造業では幅広い分野で過剰設備(供給過剰)問題や価格競争激化に伴う利益率低下などの問題が大きくクローズアップされている。

こうした中、4月以降、国家発展改革委員会を中心とした国務院の関連部署が、問題改善のための政策を相次いで打ち出しており、5月18日現在では、石炭、アルミ、セメント、鉄合金、コークス、カーバイドの6業種について具体策が発表されている。共通するのは、1)生産能力の総量コントロールを前提に、製品の高付加価値化・エネルギー効率の向上・環境汚染低減をけん引する大企業を育成する一方で、2)小規模・低エネルギー効率・高汚染などの劣後設備・企業は淘汰する、3)新規参入のハードルを高くし、国家の産業基準・環境基準に見合わない投資は一切認めない、といった厳しい姿勢である。

注目されるのは、ある企業において新規プロジェクトが認可され、生産能力が増加する際に、同時に旧式の生産能力の廃棄を求めた点であろう。生産能力の増加が抑制される中、旧式設備から質の高い新しい設備への更新が行われれば、エネルギー効率が大きく改善する原動力となり得よう。

問題は政策の実効性である。残念ながら、政策で言及されているのは許認可権など旧態依然の行政指導であり、これでは、引き締めが強化されている時期には効果が出ても、いったんそれが緩和されれば、成長志向の高い地方政府主導で投資が再び急増するという、過去のパターンが繰り返される公算は大きい。

実効性を高めるには、制度的な仕組みを作り上げることが肝要となろう。例えば、地方幹部の昇進のための政績(政治的成績)の評価項目を変えるのはどうだろうか。現在の政績は、主に担当地域のGDP成長率と税収で構成されており、このため、地方政府は成長至上主義に走りやすく、どこもかしこも開発区作りにいそしむことにつながっている(※1)。この政績の評価項目を、現政権が志向する「都市と農村の発展の調和、地域の発展の調和、経済と社会の発展の調和、人と自然の調和ある発展、国内発展と対外開放の調和」に資するものに変えるのである。具体的には、第11次5ヵ年計画の主要目標(※2)のうち、政府主導で必ず実現しなければならない「拘束性」に分類された、1)単位GDPに必要なエネルギー使用量、2)単位工業生産額当たり水使用量、3)二酸化硫黄など主要汚染物質の排出量などの減少度合い、3)森林被覆率の向上、などを評価項目にするのである。上記1)~3)は、過剰設備問題の改善にも密接にかかわる重要な項目といえる。

(※1)農地を開発区に転用し、外資系企業が進出してくれば、投資・輸出・雇用増加が見込まれる。さらに、企業所得税の減免措置が終了すれば、将来的な税収増加にもつながると考えられる。

(※2)06年~10年の第11次5ヵ年計画では、主要目標を「拘束性」と「予期性」に分類した。「予期性」の指標には国内総生産などがあり、市場の役割が重視される。

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経済調査部
主席研究員 齋藤 尚登