資産運用業界の今後

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2006年05月29日

  • 飛田 公治
足元の株式市場は調整局面であるものの、日本の資産運用業界が今後直面する課題について少し考察して見よう。高齢化が着実に進み団塊の世代が退職するタイミングを迎える日本では、最近のトレンドとして投信商品の中でグローバルな債券ファンドの分配型の売れ行きがリテール分野で良い等、インカム重視とともに限りなく元本が保証されるような商品需要が高まっているように思われる。この結果、相対的なパフォーマンス比較から結果指向の傾向が高く、特定の目標や結果に拘った商品の成長性が高い傾向を示してしる。

特にオルタナティブ商品は弛みない進歩を示しており、機関投資家の資金はヘッジファンド等へ流れ、旧来の運用機関はその伝統的運用資産の占有率を減じていくものと考えられる。この点において、今後の資産運用会社にとっては伝統的な収益の源泉が大きく変化して行くと認識され、将来の収益は現在顧客に提供していない商品であるオルタナティブ商品から得られる比率が増大すると考えられよう。従ってオルタナティブ市場も競争を増して、当該ビジネスのプロフェショナル化が一層進展する事から、ヘッジファンドの業界も現状の拡大路線から淘汰の時代を迎えるものと思われる。米国同様、大きな規模を有した運用機関とブティーク型の両端に重さがあるバーベル型の業界となると思われる。

今後の資産運用業界を展望すれば(1)高齢化社会の市場向けに対応力の高い商品を有する必要がある。(2)運用プロセスの中で、結果指向に合致させた低コストのベーター(市場連動型)戦略と高いコストのアルファ(超過収益指向)戦略の再構築が必要となろう。また、このような顧客ニーズに合致させた商品開発への人材の再配置が必要と考えられる。 これに伴い、米国でのアメリカン・ファンドの販売戦略のようにフィナンシャル・プランナーを組織的に活用するようなリテールの販売戦略の転換も必要と思われる。いずれにしても資産運用業界は大きな変革を迎える事となり、一定のペースでの再編が進み、米国での予測同様マルチブティーク型の戦略の妥当性を試される事になろう。

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