バーナンキにイエローカード?

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2006年05月24日

  • 成瀬 順也
2月1日の就任直後は順調な門出に見えたバーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長が、このところ評判を落としている。グリーンスパン前議長と比べると、「市場との対話」能力に劣ることが、誰の目にも明らかになってきた。「カリスマ」「マエストロ(名指揮者)」「レジェンド(伝説)」など、名声を思うままにした前議長と比べるのは、少し可哀想かもしれない。しかし、あまりに下手なのである。

最初の失敗は4月27日の議会証言。利上げの休止について言及したのだが、「打ち止め」ではなく「休止」と強調したことで、議論の中心は「打ち止め」なのか、「休止(1回~数回休んで再利上げ)」なのかであって、時期は「決まり」だとマーケットから受け止められてしまった。6月28~29日のFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げしないことが、ほぼ確実と判断されたのである。

しかし、実際に伝えたいことは違ったようである。6月のFOMCについては、まだ決めかねていたのである。第二の失敗は、このミスリーディングの修正方法。一部のメディアに、つい漏らしてしまったのである。本来、伝え方は二つしかない。議会証言、講演などの公式な場を使うか、記者に観測記事を書かせるか(グリーンスパンは多用したと言われるが真偽のほどは明らかでない)である。それを、内容もタイミングも完全に握られて、「市場は誤解している」と語ったなどと報道されるのだから、完全に大失態である。

まだ終わらない。極め付きは5月10日のFOMC声明文。今後の利上げは「経済指標次第だと強調」してしまったのである。これはマーケットにとって最悪だ。言い換えれば、「マーケットは経済指標に日々、一喜一憂して乱高下しなさい」と命じたようなものである。実際、米国株は以後、乱高下どころか、急落を続けている。まるで、バーナンキの行動に警鐘を鳴らしているかのように。

イエローカードを突きつけられたバーナンキが、レッドカードに変わる前にスタンドを魅了することができるかどうか、次回FOMCで真価を問われることになる。

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