雇用延長時代の賃金・退職金
2006年05月09日
65歳までの雇用継続を義務付ける制度が始まった(2006年4月1日、改正高年齢者雇用安定法施行)。定年の引き上げか再雇用、あるいは定年自体の廃止を義務付けるという内容である。厚生年金定額部分の支給開始年齢が2013年度までに65歳に引き上げられるのに合わせ、段階的に実施される。
現在、ほとんどの企業の定年は60歳であり、その賃金体系・退職金の仕組みは基本的に定年をターゲットとした制度になっている場合が多い。賃金体系の一般的な形は、従業員が若年の間は提供した労働の内容に比して少ない賃金で働き、高齢になるにつれて提供している労働の内容より多くなる仕組みである。また退職金の場合は、勤続年数に応じた支給乗率や自己都合退職削減の機能に代表される累進的な給付カーブが賃金と同様の問題を内包しているだけでなく、定年退職の場合の上乗せ給付があったり、定年扱いという仕組みがあったり、定年よりも早く辞めてもらうための早期退職優遇があったりする。賃金体系も退職金体系も、定年年齢を到達点として右肩上がりに組み立てられているのである。
現在の日本は、有効求人倍率が1を切るいわゆる“就職氷河期”の時代は終了した様相を呈しているが、それでも過去からの失業者、フリーターやニート等、高校や大学を卒業してすぐ就職し一つの企業に働き続けていく者の割合は減ってきている。また、自己の能力の発揮あるいは働きがいを求めての転職や、企業サイドの即戦力を得るための求人活動は今後も衰えることなく続き、人材の流動化はある意味、普通の状態となっていくであろう。一部の企業ではパートと正社員の賃金水準の同一化が図られ、多様な労働形態の合理的で納得の得られる人事・賃金制度への模索が始まっている。
これに雇用延長への対応が絡んで、いずれにせよこれからの時代、年功を中心に組み立てた賃金体系や退職金制度は確実に無理が露呈してくる。企業は、従業員の“働き”を納得感の高い仕組みで評価し、個人のライフスタイルに柔軟に対応できる制度に改良していく努力が必要であろう。これからは、従来のような年功に頼ったシステムでは行き詰まってしまうため、企業と従業員がより積極的に切磋琢磨していく関係となっていくことが求められる。このたびの雇用延長への対応に関しても、単に法で求められている最低限の対応で済ますか、これからの時代の人材戦略の根幹に係わる問題だと認識して根本的な対応を目指すかどうかが、今後の企業の発展の分かれ道となっていくであろう。
現在、ほとんどの企業の定年は60歳であり、その賃金体系・退職金の仕組みは基本的に定年をターゲットとした制度になっている場合が多い。賃金体系の一般的な形は、従業員が若年の間は提供した労働の内容に比して少ない賃金で働き、高齢になるにつれて提供している労働の内容より多くなる仕組みである。また退職金の場合は、勤続年数に応じた支給乗率や自己都合退職削減の機能に代表される累進的な給付カーブが賃金と同様の問題を内包しているだけでなく、定年退職の場合の上乗せ給付があったり、定年扱いという仕組みがあったり、定年よりも早く辞めてもらうための早期退職優遇があったりする。賃金体系も退職金体系も、定年年齢を到達点として右肩上がりに組み立てられているのである。
現在の日本は、有効求人倍率が1を切るいわゆる“就職氷河期”の時代は終了した様相を呈しているが、それでも過去からの失業者、フリーターやニート等、高校や大学を卒業してすぐ就職し一つの企業に働き続けていく者の割合は減ってきている。また、自己の能力の発揮あるいは働きがいを求めての転職や、企業サイドの即戦力を得るための求人活動は今後も衰えることなく続き、人材の流動化はある意味、普通の状態となっていくであろう。一部の企業ではパートと正社員の賃金水準の同一化が図られ、多様な労働形態の合理的で納得の得られる人事・賃金制度への模索が始まっている。
これに雇用延長への対応が絡んで、いずれにせよこれからの時代、年功を中心に組み立てた賃金体系や退職金制度は確実に無理が露呈してくる。企業は、従業員の“働き”を納得感の高い仕組みで評価し、個人のライフスタイルに柔軟に対応できる制度に改良していく努力が必要であろう。これからは、従来のような年功に頼ったシステムでは行き詰まってしまうため、企業と従業員がより積極的に切磋琢磨していく関係となっていくことが求められる。このたびの雇用延長への対応に関しても、単に法で求められている最低限の対応で済ますか、これからの時代の人材戦略の根幹に係わる問題だと認識して根本的な対応を目指すかどうかが、今後の企業の発展の分かれ道となっていくであろう。
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