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人口減少は日本農業のチャンス

2006年05月01日

原田 泰

東北に講演に行く機会があり、そこで肉牛生産農家を見学させていただき、お話しを聞いた。巨大な牛舎で子牛を2年間肥育して販売する。極めて大規模な農家もいて、2000頭飼っている農家もあるという。平均的な農家でも数百頭である。1頭100万円程度であるから、2000頭飼っていれば、年に10億の売り上げである。

10億の売り上げがどれくらいかというと、日本で10億以上の興行収入のある映画は年に20本もない。映画は、安定した売り上げを保つことが極めて難しい。安定した売り上げを保っている「釣りバカ日誌」の興行収入は5億円程度のものである。大企業が、名のある監督や男優女優を集めた大プロジェクトの売り上げがこの程度のものなのだ。しかも、半分は映画館に持っていかれる。もちろん、ビデオ販売、テレビ放映権料などが興行収入なみにあるが、それでもたいしたことはない。

肉牛の飼料はほとんどが輸入品で、購入しなければならない。子牛も購入する。子牛の値段は成牛の半分弱である。牛舎費、飼料費、人件費、子牛と成牛の販売価格との差が利益である。牛舎、飼料、人件費、子牛はいずれもコストの高いものである。この差が利益であるから、農業というよりも原価管理の難しいビジネスと言ったほうがよい。それでも、映画ビジネスよりは原価管理が簡単そうで(管理するのは個性の強い人々ではなく牛と飼料である)、売り上げも予想しやすい。しかも、近年のBSE問題で成牛価格は20万円値上がりした。同時に子牛価格も10万円値上がりしたが、すでに子牛を買っていた分については、100頭の牛で、2000万円の利益となったわけだ。

農業がダイナミックな産業と思われないのは、規模の拡大が難しいと思われているからだ。しかし、規模の拡大が難しいのは土地の制約がきつい農業だけだ。牛舎で子牛を肥育するという農業であれば、土地の制約はそれほどでもない。だから、規模の拡大が可能で、映画プロデューサー以上の売り上げを管理するビジネス農家が登場する。違いは、女優と友達付き合いができないことだけだ。

人口が減少すれば、他の種類の農業においても土地の制約はなくなっていく。人口減少は、日本農業にとっての大変なチャンスになるのではないか。

(3月の本欄では、日本の高級車が日本の道を走っているテレビコマーシャルはないと書いてしまったが、日本の橋を走っているコマーシャルはあるそうである。お詫びして訂正いたします。たしかに、これだけ公共事業をしていながら高級車の走る橋がひとつもないのはおかしい。)

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