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格差先進国・米国のアレコレ

2006年04月27日

経済調査部 シニアエコノミスト 近藤 智也

かつて総中流といわれた日本において、現在、格差が広がっているのは5年間にわたる小泉改革のためであるという批判がある。これに対して、改革によって目立った格差は生じていない、あるいは多少の格差は止むを得ないという指摘があるかもしれない。結局、そもそも格差は何をもってはかるのか、格差とは何かという問題に行きつくだろう。

格差拡大・縮小を計る物差しとしてジニ係数があり、その上昇は格差拡大を意味する。統計の差異を調整したOECDの国際比較によると(「90年代後半のOECD諸国における所得分布と貧困」working paper22、2005)、日本の所得格差を示すジニ係数は先進国27カ国中11番目であり、決して低いとはいえない。上位をみると、メキシコ、トルコ、ポーランドそして米国、ポルトガルと続く。日本の場合、高度成長期には所得のジニ係数が低下したが、1980年を境に横ばい・上昇傾向である。日本より水準が高い米国のジニ係数も1970年から概ね上昇トレンドを辿っており、景気循環には左右されない動きになっている。

一方、米国の貧困率(人口に占める貧困層の比率:貧困層とされる所得基準は家族の規模や構成によって異なる)は2000年を底に4年連続で上昇中だ。貧困率の水準は過去40年間の平均値を依然として下回っているが、消費者マインドの動きは正直である。90年代後半から2001年半ばまでは所得階層ごと(5万ドル以上と未満)のマインドは同じように推移したが、2001年末から乖離し始め、2003年半ばから一段と広がったままである。背景には、ブッシュ大統領が実施した一連の減税措置、特に2003年減税措置のインパクトが大きかったとみられる。2003年措置にはキャピタルゲイン課税や配当課税の軽減が盛り込まれており、株式保有額が相対的に多い富裕層ほどメリットが大きかった。FRBが公表した調査によれば、2004年時点の家計全体の株式保有額(中央値)2万4300ドルに対して、最上位10%の世帯は約17万ドル保有していた。しかし、これだけで乖離を説明することは難しい。というのも、株価下落を受けて、富裕層でも2001年比で株式保有額が3割以上目減りした。金融資産に占める株式の割合は低下し、全体的に株離れが起きているのである。

株式資産の目減りを相殺したのが住宅資産の増加であり、所得階層に関係なくプラスとなった。ただ、過去3年間の住宅資産の増加率・増加幅が富裕層ほど大きい点は言うまでもなく、資産の格差、所謂、持てる者と持たざる者の格差が広がったといえよう。また、大幅に上昇した持家保有率の変化を学歴別でみると、全体の約半分を占める高卒以下の保有率が99年以降ほぼ横ばいだったのに対して、学士以上の学歴を持つ世帯の持家志向は一段と高まっており、2004年以降加速した住宅価格上昇の恩恵を享受したとみられる。他方、住宅市場を実需面で支えた一要因が移民である。2001年と2003年という限られたデータの比較だが、90年代に移民した層の保有率は6~7%ポイント上昇した(米国全体では0.3%上昇)。

昨今、不法移民に対する取組みが11月の中間選挙の大きな争点になっている。世論調査(Gallup社4/20公表)をみても、最も重要な問題としてイラク戦争が25%(3月時点20%)と1位に挙げられているが、次いで移民が19%と関心を集めている。3月時点(6%)では他の多くの問題の一つに過ぎなかった点を考慮すると、急浮上といっていい。直近、どの世論調査をみてもブッシュ大統領の支持率は30%台と、就任以来最低水準に落ち込んでいるが、選挙で共和党が敗北することになれば、二期目の課題に掲げた税制改革や社会保障制度改革の目処は一段と立たなくなるだろう。イラク戦争の後始末も事実上次期政権に先送り状態のブッシュ大統領は、名を残さずに格差だけを残すのだろうか。

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近藤 智也

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