通貨は何を基準に選ぶべきか
2006年03月27日
「高金利通貨」ほど、金利収入を目当てにした資金流入によって価値が上がりやすい、との印象があるかもしれない。しかし、現実にはそうではない。8通貨のパフォーマンス(05年度、06年3月22日まで)を比較すると、最も金利(3ヶ月物、05年度平均)の高いNZドルが最下位、2番目に金利の高い豪ドルが4位、3番目に金利の高い英ポンドが5位という結果になっている。「金利水準」と通貨パフォーマンスには、ほとんど相関がないのである。そもそも、もし「高金利通貨ほど上がる」のであれば、高金利通貨には大量の資金が流入し、通貨価値は急騰する。その結果、輸出競争力の低下から経済が疲弊してしまい、金利は低下に向かう。そうなれば、通貨は一転して売りを浴びるようになろう。NZランドがまさにこのパターンを歩んでいるようにみえる。「高金利通貨ほど上がる」という現象は、短期的に成立することはあっても、長期的に成立し続けることはないのである。
では、「金利水準」が通貨変動の決定要因でないなら、何が決定要因なのか。05年度の通貨パフォーマンスは、金利上昇幅や金利先高観(1年物-翌日物、05年度平均)が最も大きい米ドルが2位、同2番目のカナダドルが1位という結果になっている。つまりは、「金利変化」の実績や見通しが為替を左右している。投資通貨を選ぶ際は、金利水準が高いか低いかということよりも、金利が相対的に上昇しそうか低下しそうかということを基準とした方が良さそうだ。なお、現状において、金利先高観(同上)が大きい順に並べると、米ドル、ユーロ、スイスフラン、カナダドル、英ポンド、日本円、豪ドル、NZドルである。おそらく、この順位も米国の利上げ後には変動しているだろう。金融政策や経済指標などを受けて日々変動する金利先高観の動向をみるのも、今後の為替相場を考える一つの方法ではなかろうか。
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