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中国経済の「渋滞」

2006年03月24日

肖 敏捷

中国の自動車販売台数は2005年に592万台と、米国、日本に次ぎ世界第3位となり、大和総研では2010年に960万台を予想している。乗用車保有台数の世界平均は8人に1台だが、中国は125人に1台に留まっており、「マイカー大国」にはまだ長い道のりが残されているといえよう。一方、中国国家統計局によると、2005年の交通事故は45万件、死傷者数は56.9万人(うち、9.9万人が死亡)に達し、交通事故件数では既に「大国」入りしているのは、皮肉と言わざるを得ない。また大都市での交通渋滞も日増しに深刻化している。

自動車急増に伴う渋滞を緩和するため、政府が道路建設に巨額の資金を投入した結果、中国は世界レベルの高速道路網を築き上げ、大都市周辺の環状道路の整備も急速に進んでいる。しかし、中国での渋滞メカニズムは、他国でも見られるような「常識的な渋滞」ではなく、交通ルールの無視や運転マナーの欠如による「非常識な渋滞」であることが多い。上海に比べ道路整備が遅れている香港の中心街で、この種の「非常識な渋滞」は少ないことから、派手な環状道路を作るより、地道なマナー教育のほうが中国の渋滞解消には重要ではなかろうか。

中国経済も80年代以降の高成長を経て、渋滞が起きやすい状況に直面している。市場経済体制への移行に伴い、内外企業や個人の市場参入が活発化し、経済成長の原動力となっている。しかし、法整備や信用秩序などルール作りの遅れで、売掛金の回収難、知的所有権の侵害、不透明な商慣行など、経済活動における「非常識な渋滞」が深刻化している。しかも、軍や政府専用のナンバープレートをつけた高級車の、堂々たる信号無視も蔓延している。WTO加盟後、政府は新たな制度作りに本腰を入れてはいるが、市場経済のルールを守る精神が「民」だけでなく「官」にも浸透するには時間がかかるだろう。また、これが実現できなければ、持続成長という政府目標の達成は難しく、中国経済がより深刻な渋滞や大事故に巻き込まれるリスクも排除できない。

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