中国経済の「渋滞」
2006年03月24日
自動車急増に伴う渋滞を緩和するため、政府が道路建設に巨額の資金を投入した結果、中国は世界レベルの高速道路網を築き上げ、大都市周辺の環状道路の整備も急速に進んでいる。しかし、中国での渋滞メカニズムは、他国でも見られるような「常識的な渋滞」ではなく、交通ルールの無視や運転マナーの欠如による「非常識な渋滞」であることが多い。上海に比べ道路整備が遅れている香港の中心街で、この種の「非常識な渋滞」は少ないことから、派手な環状道路を作るより、地道なマナー教育のほうが中国の渋滞解消には重要ではなかろうか。
中国経済も80年代以降の高成長を経て、渋滞が起きやすい状況に直面している。市場経済体制への移行に伴い、内外企業や個人の市場参入が活発化し、経済成長の原動力となっている。しかし、法整備や信用秩序などルール作りの遅れで、売掛金の回収難、知的所有権の侵害、不透明な商慣行など、経済活動における「非常識な渋滞」が深刻化している。しかも、軍や政府専用のナンバープレートをつけた高級車の、堂々たる信号無視も蔓延している。WTO加盟後、政府は新たな制度作りに本腰を入れてはいるが、市場経済のルールを守る精神が「民」だけでなく「官」にも浸透するには時間がかかるだろう。また、これが実現できなければ、持続成長という政府目標の達成は難しく、中国経済がより深刻な渋滞や大事故に巻き込まれるリスクも排除できない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2021年01月15日
ポストコロナの人事制度を考える視点
~働く人の意識変化をどう捉えるか~
-
2021年01月14日
2020年11月機械受注
船電除く民需は市場予想に反し2ヶ月連続で増加、回復基調が強まる
-
2021年01月14日
アメリカ経済グラフポケット(2021年1月号)
2021年1月12日発表分までの主要経済指標
-
2021年01月13日
震災10年、被災地域から読み解くこれからの復興・防災・減災の在り方
『大和総研調査季報』 2021年新春号(Vol.41)掲載
-
2021年01月14日
共通点が多い「コロナ対策」と「脱炭素政策」
よく読まれているコラム
-
2020年10月19日
コロナの影響、企業はいつまで続くとみているのか
-
2015年03月02日
宝くじは「連番」と「バラ」どっちがお得?
考えれば考えるほど買いたくなる不思議
-
2020年10月29日
コロナ禍で関心が高まるベーシックインカム、導入の是非と可否
-
2018年10月09日
今年から、夫婦とも正社員でも配偶者特別控除の対象になるかも?
配偶者特別控除の変質
-
2006年12月14日
『さおだけ屋は、なぜ潰れないのか』で解決するものは?