ユーロ圏の拡大とそのインパクト
2006年03月06日
来年から欧州連合(EU)への新規加盟とユーロ圏の拡大が実現する可能性が強い。早ければ今年5月頃には、ルーマニアとブルガリアの来年からのEU加盟が承認さる可能性が強い。また、スロベニア、場合によってはリトアニアとエストニアが来年からユーロを導入することが夏頃には決定されるとみられる。もし実現すれば、01年のギリシャ以来の新規導入で、ユーロが採用される国は13ないしは15カ国となりそうである。
どちらの動きも中・東欧諸国がさらに一層「欧州」に組み込まれることを意味する。ただ、該当する諸国にとってはエポック・メーキングな出来事だが、既存の「欧州」に与えるインパクトは小さい。EU新規加盟2カ国は現在のEU25カ国に比べれば、人口で6%、名目GDPで0.8%に過ぎない。ユーロ圏の拡大はそれ以上にインパクトが小さい。新規にユーロを導入する諸国は各国とも人口100~300万人程度で、3カ国を合わせた名目GDPも現在のユーロ圏12カ国の0.7%でしかない。
しかし、ユーロ圏の拡大がEUの今後に与える影響を過小評価してはならないだろう。というのは、今回の2ないし3カ国のユーロ導入は今後に控える他のEU新規加盟国や潜在的なEU加盟国にとって絶好なサンプルとなるからだ。今回の2ないし3カ国は、前述のように、人口や経済規模が小さく、計画経済から市場経済への移行に伴う各種の構造改革も比較的スムーズに行なわれた「優等生」である。
ただ、購買力ベースでの一人当りGDPはスロベニアこそユーロ圏内最低のポルトガルをやや上回るが、リトアニアとエストニアではそれを3割以上下回る。つまり、今まで以上に経済格差がある諸国がユーロ圏に組み込まれることになる。経済構造改革の進展に呻吟する中・東欧諸国の多くも同様な水準にある。それら諸国にとって、今回のユーロ圏の拡大は、ユーロ圏への包摂が自国経済に与えるインパクトを推し量る格好の事例となろう。結局、これら諸国はローコストの労働力などの資源を西欧諸国に供給するに過ぎないのか、ユーロ導入による真の経済的メリットを享受できるのか、多くの中・東欧諸国は新規ユーロ圏参入諸国の動向を注視している。
どちらの動きも中・東欧諸国がさらに一層「欧州」に組み込まれることを意味する。ただ、該当する諸国にとってはエポック・メーキングな出来事だが、既存の「欧州」に与えるインパクトは小さい。EU新規加盟2カ国は現在のEU25カ国に比べれば、人口で6%、名目GDPで0.8%に過ぎない。ユーロ圏の拡大はそれ以上にインパクトが小さい。新規にユーロを導入する諸国は各国とも人口100~300万人程度で、3カ国を合わせた名目GDPも現在のユーロ圏12カ国の0.7%でしかない。
しかし、ユーロ圏の拡大がEUの今後に与える影響を過小評価してはならないだろう。というのは、今回の2ないし3カ国のユーロ導入は今後に控える他のEU新規加盟国や潜在的なEU加盟国にとって絶好なサンプルとなるからだ。今回の2ないし3カ国は、前述のように、人口や経済規模が小さく、計画経済から市場経済への移行に伴う各種の構造改革も比較的スムーズに行なわれた「優等生」である。
ただ、購買力ベースでの一人当りGDPはスロベニアこそユーロ圏内最低のポルトガルをやや上回るが、リトアニアとエストニアではそれを3割以上下回る。つまり、今まで以上に経済格差がある諸国がユーロ圏に組み込まれることになる。経済構造改革の進展に呻吟する中・東欧諸国の多くも同様な水準にある。それら諸国にとって、今回のユーロ圏の拡大は、ユーロ圏への包摂が自国経済に与えるインパクトを推し量る格好の事例となろう。結局、これら諸国はローコストの労働力などの資源を西欧諸国に供給するに過ぎないのか、ユーロ導入による真の経済的メリットを享受できるのか、多くの中・東欧諸国は新規ユーロ圏参入諸国の動向を注視している。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日