現在の世界情勢はロシアに味方している

RSS

2006年03月03日

  • 佐藤 清一郎
今の世の中の流れは、資源の大量保有国、そして、政治大国であるロシアにとって、極めて好ましいものとなっている。まず第1が、中国、インドをはじめとする新興地域の経済発展である。エネルギー非効率の残る新興地域が経済成長への扉を開くことは、資源需給を逼迫させ、原油をはじめとした資源価格を上昇させる。そのため、その供給国であるロシアにとっては、大きなメリットとなる。最近では、新興地域の経済発展速度が加速している感があるので、ロシアとしては、状況が、ますます良くなる方向である。第2が、頻発する地域紛争である。その解決に向けて、米国には相当の負荷がかかっているが、一方、ロシアは、それ程の大きな負担はしていない。むしろ、地域紛争解決の調停役として、世界舞台での存在感を高めている。

こうした追い風による状況好転は、様々な数値変化で確認できる。まず、経済成長率である。市場経済への道を模索し続け、結果として、金融危機を生じさせてしまった1991-1998年の、年平均経済成長率は、-6.6%と大幅なマイナスであったが、その後の、1999-2005年では、同+6.7%と大幅なプラスへと転換している。次が、株式市場の動きである。RTS株価指数(1995年9月1日=100、ドルベース)は、1998年の金融危機後の、1998年10月5日、38.53まで急落したが、その後は急激な回復を見せ、最近では、1500程度での動きとなっている。金融危機後の最悪期と比較すると、まさに桁違いの上昇である。最後が、海外からの資金流入である。エネルギーや卸小売分野を中心に、直接投資資金流入が増加している。海外からの直接投資残高は、1998年頃は、対GDP比で、僅か5%程度だったが、最近では、同15%程度にまで上昇してきている。また、国内の設備投資に占める直接投資による割合は、1998年までは、平均4%程度であったが、1999年以降は、平均8%程度まで上昇してきている。

現在の世界的枠組みの起点となったのは、1980年代後半の東西冷戦構造の崩壊である。ロシアは、経済的負担に耐えかねて、自らがギブアップせざるを得なかった冷戦構造だが、そのことが、東西地域の融合に伴う新興地域の経済発展や地域紛争頻発といった形で、その後の世界を激変させ、ロシアの存在感を高める方向に動いている。ゴルバチョフ大統領をはじめ当時の首脳部が、冷戦後の世界が、今のような姿になるかを予想していたかは別にして、結果だけ見れば、冷戦放棄という大胆な決断は、ロシアとしては、今のところ、正しかったということになる。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。