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「後藤田五訓」に学ぶ年金資産管理

2006年02月16日

大藤 康博

本年度の我が国企業年金の運用利回りは、堅調な国内外株式市場に支えられ、4月~12月までで15%近辺まで上昇し、制度上求められる予定利率を大幅にクリアーする見込みである。2003年度から今年度の足元まで獲得した収益率は、2000年度からの3年連続のマイナス利回りを帳消しにし、水面上に浮上したものと思われる(平均的には2000年度からの累積利回りは7%前後)。

特に当年度は、過去最高の利回りを記録した2003年度(17%)を凌ぐ勢いであり、長年運用低迷で代行返上や給付引き下げなど、その業務運営に腐心した企業年金関係者を安堵させている。また同関係者を招いての運用機関が主催するセミナーは、一様に盛況であり、会場では関係者同士が談笑する姿が見受けられる。

先の関係者が株高により喜々とする気持ちは理解できるが、1月半ばに起きたライブドア問題により、一時的な株価の急落に不安を感じた人は多いものと思われる。この様に市場は常に不安定であり、先行きを見通すことは困難である。こうした状況下であるが故に、今一度、長期運用者であることを踏まえた年金資産管理の基本精神に立ち返る必要があるものと考え、敢えて述べておきたい。

長期運用の基本を再認識する上で、表題に掲げた故後藤田正晴元副総理の五訓が極めて参考になるものと考える。この五訓は昭和61年に内閣安全保障室を始めとした内閣五室制度発足式典の際、当時の官房長官である後藤田氏から発せられ、後に当時の内閣安全保障室長佐々淳之氏が名づけたものである(詳しくは同氏著書『わが上司後藤田正晴』)。この五訓の具体的内容は、(1)省益を忘れ、国益を想え(2)悪い、本当の事実を報告せよ(3)勇気を以って意見具申せよ(4)自分の仕事でないというなかれ(5)決定が下ったら従い、命令は実行せよの文字通り5項目から成る、所謂「危機管理」に対応するための要諦である。

企業年金関係者(管理者)の立場から考えれば、個々の企業の利益より年金加入者・受給者に貢献することを第一義とし、自ら管理する企業年金の運用や財政状況を市場環境に係らず、正確に前記の加入者などや母体企業に情報開示すべきものと解される。そして厚生労働省などの監督官庁や母体企業に対しても運営上の問題点を積極的に具申する一方で、監督機関や母体企業の他部署任せにするといった事がないように戒めている。最後の点は、運用や制度運営方針が決定された場合は、当然の事ながらその方針に沿って着実に業務を遂行することを意味するものと考える。

特に最後の点は、卑近な例を挙げれば、国内株式の急伸により、足元、過半の企業年金は基本資産配分からの乖離を修正するといった行動が求められている。しかしながら、先行き上昇予測からその実施に躊躇している先が意外に多い。決定した方針は繰り返しとなるが着実に実行されるべきであり、仮にムードに流され実施を見送り、その後、株式が急落した場合は受託者責任を一層厳しく追及されることになりかねない。

これまで「後藤田五訓」を企業年金管理者に対して述べてみたが、当然あらゆる職業人に普遍的なものであり、我々年金コンサルタントとしても、顧客である企業年金の負託に応えるべく、この五訓を胸に刻む必要があることは言うまでも無い。

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