セキュラートレンド&日本の強味

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2006年02月15日

  • 三宅 一弘
足 元の日本株は高値波乱の様相を呈している。株価の急激な上昇対する高値警戒感に加えて、以下の調整要因を指摘する声が多いようだ。

(1)ライブドア・スキャンダルをはじめ4点セットと小泉政権に対する逆 風。ポスト小泉や構造改革の行方に暗雲を投げかけている。ライブドア・スキャンダルに関 しては、悪材料出尽くしがどのあたりなのか。堀江前社長逮捕と上場廃止の有無、さらに政界などに波及するのか、不透明なのは事実である。
(2)日銀の量的緩和解除後、流動性低下(株安)とみるのか、経済正常化 (株高)とみるのか。ゼロ金利解除に向けて、日銀の姿勢がはっきりしない、
(3)これらもあって外人動向も気がかり材料。売りに転じるのではないか、
(4)米中摩擦と、人民元高(→円高)リスク。4月後半の胡錦濤主席の訪米 や米国議会の為替報告を前に、中国政府は2~3月に人民元切り上げを実施し、米国の対 中批判をかわすとの見方が出てきている。その際、円高のリスクが高まるのではないか、
(5)中東の政情不安、地政学的リスク。それらに伴う供給制約に伴う原油価 格の急騰、
(6)米国の利上げ打ち止め時期と、年後半の景気減速、などである。

一方で、日本経済や企業収益は着実に改善し、デフレ後の世界へ移行しつつある。しかもいくつもの成長ドライバー(収益拡大の柱)が育ちつつある中で、底堅 い拡大過程にある。多極的な収益ドライバーは、96~97年の2極化相場や2000年のIT相場のように一握りの収益ドラーバーとは大きく異なっている。 イベント的には今週17日の国内GDP統計、3月下旬の地価公示、米FOMC、4月初めの日銀短観、4月末の日銀展望レポート、おそらく同時か5月の量的 緩和解除と進んでいくだろう。今後の日本株の大勢観としては、調整を交えながらも、景気・収益拡大が牽引する長期上昇相場との見方を継続する。日本経済の 正常化とゼロ金利継続が確認されれば、TOPIXは1,750突破の動きになるだろう。

物色面をみると、企業や金融機関の構造問題の処理が完了した結果、循環的に物色されながら、底上げされる余地が大きくなっている。ただし、循環・底上げと いっても、結果的には格差は生じる。その際、より高いパフォーマンスを中長期的に享受できるグループとは、(1)収益ドライバーの強さや継続性が強靱なと ころである。数10年に1度といった大変革が起これば、そのトレンドは長期間継続し、その潮流(セキュラートレンド)に乗る企業群が大きな利益を享受する だろう。(2)もう一つ重要な視点は日本企業の得意分野、国際競争力の強い分野、稼げる分野である。具体的には川上分野(素材、部品)、資本財(機械・ロ ボット、製造装置、金型)、最終製品では自動車などである。(1)、(2)の重なるところが最良となる。

セキュラートレンドとして、内需関連では、50年に1度といったデフレ脱却の動きであり、それを支える企業活動の中長期的な拡張期入りに注目する。最もメ リットを受けるのが大手銀行を筆頭に不動産や証券などとの見方であるが、加えて、設備投資関連や消費関連も良好となろう。

海外では、BRICsの経済拡大に伴って恩恵を受ける産業が代表である。特に、中国やインドなど巨大新興国の資源・エネルギーに対する需要増大と、豊かに なり中間層が激増し、生活様式の高度化が進む点が注目される。さらに、資源制約問題がクローズアップされ、省エネや環境、石油代替エネルギーがカギになる だろう。個別では、自動車の安全・快適・環境面における進化に関して、成長性と強味を有する企業群が注目を集めそうだ。

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