初の課徴金納付命令と証券取引等監視委員会に対する期待
2006年02月13日
2006年1月13日、証券取引等監視委員会は、インサイダー取引に関連して、初の課徴金納付命令勧告を行った。この勧告を受けて、2月8日には金融庁が課徴金納付を命じる決定を行った。(その後、2月1日に、2件目の課徴金納付命令勧告が、別の会社のインサイダー取引に関連して出されている。)
課徴金制度とは、法令(この場合は証券取引法)に違反する行為を行った者に対して、行政上の措置として、金銭的な負担(いわゆる「課徴金」)を課す制度である。2005年4月にインサイダー取引、相場操縦、風説の流布、有価証券届出書等の虚偽記載を対象にスタートした。同年12月からは有価証券報告書等の虚偽記載も課徴金の対象となった。
インサイダー取引などに対しては、これまでも懲役・罰金などの刑事罰による制裁はあった。しかし、刑事罰は、その影響も大きく慎重な運用が求められる。また、厳格な立証が求められる刑事裁判手続も必要である。こうした慎重かつ厳格な運用のため、違反行為に対して刑事罰を課すためには、十分な証拠収集など、多大な時間・コストが必要となる。そのため、証券取引に関する違反行為全てを摘発・立件することは難しく、自然と(昨今、マスコミを賑わせているような)大事件に絞った「一罰百戒」的な対応とならざるを得ない。これでは結果的に、小さな不正ならば許されるという誤解を招くことにもなりかねない。そこで、比較的簡易な手続によって摘発・制裁が可能な行政上の措置として課徴金制度が導入されたのである。運用が機動的で柔軟な課徴金であれば、軽微なケースを含めて、より多くの違反行為の摘発が容易になり、証券取引法の実効性が高まるだろうという訳である。
その意味では、透明・公正な証券市場のため、課徴金制度に対する期待は大きいと言える。今回の第一号案件を機会に、課徴金制度を通じて、不正を許さない証券市場が構築されることを期待したい。また、課徴金制度運営のカギとなるのは、証券取引等監視委員会である。同委員会のあり方を巡っては、現在、様々な議論が行われている。課徴金制度を適切に運営するためにも、同委員会に十分な権限と体制が与えられているのか、この機会にしっかり議論する必要がある。
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