急拡大中の外為証拠金取引とそのリスク

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2006年02月10日

  • 篠原 春彦
新しい金融商品である外国為替証拠金取引が急拡大している。預かり証拠金残高は2000年3月の90億円弱から2005年3月には2,900億円と5年間で30倍以上に膨らんでいるという。その後も増えている模様だ。この商品は証拠金として預け入れた資金の10~20倍程度の為替取引ができるという金融商品。1998年に外国為替法の改正で個人にも門戸開放された取引が、今では会社員の「お小遣い」の運用手段として定着してきている。

2005年7月には、金融庁が金融先物取引法を改正、取引業者に対して電話や訪問による勧誘を禁じたほか、資本金5,000万以上などの条件を満たした上で業者登録を義務づけた。以前は、監督官庁がなく規制が緩かったこともあり、強引な勧誘や預けた証拠金を返さないなどのトラブルが頻発し社会問題となっていた。規制強化で、問題業者は排除されることとなり、業界は一応、健全化の方向に進んでいる。

ただ、規制が強化されたといっても投資家にとってリスクが全くなくなったわけではない。未登録のまま隠れて違法な営業を続ける業者が出てくる可能性が残るほか、登録された取引業者でも破綻の可能性があるからである。銀行の預金保険制度のように顧客の資金を守る公的な仕組みが整っていないことなどもあり、結局のところ優良業者かどうかは自己責任で見極めなければならいのである。

また、外為証拠金取引は、ハイリスク・ハイリターン商品であることにも注意しなければならない。例えば10倍型の商品であれば100万円の証拠金で1,000万円分の外貨が買える。仮にこの時1ドル=100円時に購入し、相場が110円になった時点では、1,100万円の価値があり、これを売れば100万円から手数料などを引かれた分が顧客の利益になる。ただ、相場が90円に振れれば元手がすべてなくなってしまう。場合によっては、証拠金では埋めきれない額の損失が生じることもあるのである。健全な業者との取引でも、取引自体に大きなリスクがあることを肝に銘じておく必要がある。

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