平成18年度地方財政の姿

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2006年02月09日

  • 星野 菜穂子
平成18年度の地方財政対策等が公表され、来年度地方財政のマクロの姿がほぼ明らかとなっている。その概要を整理し、注目点に言及する。

平成18年度のマクロの地方予算とも呼べる地方財政計画の規模は、83兆1,800億円程度となり、平成14年度以降5年連続の減少となっている。財政規模はピーク時から6兆円余り減少、平成7年度の水準を若干上回る程度となっている。地方一般財源(※1)は、55兆6,300億円(前年度比+200億円程度)と前年度を若干上回って確保されている。一般財源は「骨太の方針2005」において「地方団体の安定的な財政運営に必要な・・・一般財源の総額を確保」と明記されているものの、地方交付税総額をめぐる攻防の中で、注目を浴びる課題となっていた。地方一般財源の内訳を見ると、地方交付税、臨時財政対策債はそれぞれ前年度比減少しているが、地方税収は34兆9,000億円程度と前年度比1兆5,800億円余りの増額見込みとなっており、「一般財源総額確保」に寄与している。これらにより、地方の財源不足額は8兆7,400億円程度(地方財政計画の規模に対して10.5%)と、昨年度の11兆2,000億円から縮小傾向が続いている。地方債発行額(普通会計分)も10兆8,174億円程度と前年度比減少、地方債依存度(地方債発行額/地方財政計画規模)は約13%と3年連続低下している。マクロの予算レベルでは、「財務体質の着実な改善」がみられている。

地方債に注目してみれば、来年度の地方債計画額(普通会計分と公営企業会計等分)は13兆9,466億円程度と、前年度比10.2%の減少となっている。資金別に見ると、政府資金、公営公庫資金、銀行等引受資金が前年度比減少する中で、市場公募資金のみ増額している。その結果、政府資金の割合は4割を下回り、全体に占める市場公募資金の割合は約25%となった。一層の市場公募化の進展が確認される内容である。市場公募資金に関しては、地方債計画に計上される新発債は3兆5,000億円だが、借換債を含めると6兆4,600億円程度の発行が予定されている。来年度は新たに3団体(堺市、大分県、島根県)が、全国型市場公募債発行団体となる予定である。

地方債に関しては、来年度から事前協議制(※2)に移行する。協議制とはいえ、国の関与の特例として許可制が適用される団体もあり、その基準となる早期是正措置等も含め、当面、移行の影響等が注視される状況にある。

三位一体改革については、総務大臣の懇談会である「地方分権21世紀ビジョン懇談会」、地方六団体側では「新地方分権構想検討委員会」が設置されるなど、第二期改革に向けた動きが活発化しており、これらの動向も注目されていこう。

(※1)一般財源とは、地方税、地方交付税のような使途が特定されない財源を指す。ここでは地方税、地方交付税、臨時財政対策債、その他として減税補てん特例交付金、減税補てん債、地方譲与税(所得譲与税を除く)が含まれる。

(※2)事前協議制は、起債の際の総務大臣および都道府県知事の許可が協議に移行するもので、総務大臣等の同意がなくても起債が可能となる。ただし、財政悪化団体は早期是正措置(赤字比率、実質公債費比率が一定以上等)により許可制が適用される。

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