改善するグローバル投資家の新興市場投資意欲

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2006年02月08日

  • 由井濱 宏一
06 年に入っても世界の株式市場は比較的堅調な展開となっているが、より注目できるのは新興市場への資金純流入が急増していることである。米国の調査会 社、Emerging Portfolio.com Fund Research社によると、新興株式市場への資金純流入額(同社の調査対象となっているグローバルエマージングファンド及びインターナショナルファンド ベース)は06年最初の週に10億USドルを上回ったあと、直近の週(06年2月1日に終了する週)でも6億USドル近くに達し、依然として高水準を維持 している。04年~05年にかけての純流入額はせいぜい5億USドル(4週移動平均ベース)であったことからすると足元の資金流入の急拡大振りが窺がえ る。

市場別では中国やインドなどいわゆるBRICs市場への資金流入がとりわけ多かったようだ。この背景には、米国の利上げ打ち止め観測が広がり、グローバル 投資家の新興国市場投資へのリスク許容度が高まったことが大きい。利上げ打ち止めで、新興国の成長期待が一層押し上げられ、株式市場のリスクプレミアム低 下期待につながっているようだ。アジアの新興市場債券と米国債(10年物)の利回りスプレッドでリスクプレミアムの推移をみると、同スプレッドは04年半 ば以降から縮小を続け、06年1月末では99年以降での最低水準となっている。新興市場投資への信頼感が大きく改善しているといえよう。

こうした傾向は(日本を除く)アジア/パシフィックの主要市場でも同様で、やはり年末年始の資金純流入が急増している。香港、中国市場への流入が全体を押 し上げた格好だが、05年11月以降低調気味だったシンガポールへの資金純流入も急速に増加しているのが注目できる。香港と並んで内需株中心の市場で金利 敏感市場であることから、米国金利引き上げ終了間近の観測がポジティブに作用しているようだ。また、中国については人民元高進行への思惑が台頭、保険や銀 行など人民元高で恩恵を受けそうなセクター中心に資金流入が継続しているとみられる。アジアの主要株式市場では益回りが米国債10年物利回りを大きく上回 る状態(高イールドスプレッド状態)が続いており、今後新興、アジア市場への投資コンフィデンスが更に改善するにつれてイールドスプレッドは縮小(株価は 上昇)に向かう可能性が高い。

Fund Flows as of Feb 1, 2006

Asia Pacific x Japan

Hong Kong

Global Emerging market

Singapore
※アジア/パシフィックは日本を除く(香港、中国、シンガポール、韓国、台湾、オーストラリアの合計)。直近は2月1日に終了する週で4週移動平均

(出所)Emerging Portfolio.com Fund Research、DIR

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