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名目成長率と長期金利 ~時代は変わる?~

2006年02月06日

尾野 功一

財政収支は、利払い負担とそれ以外の全てをまとめた基礎的財政収支から構成される。前者は、既存の債務と資金調達時の金利水準によってほぼ受動的に決まり、財政再建を能動的に行なうには支出削減や増税などを通じて後者を改善させる必要がある。前者の増大ペースよりも後者の改善ペースが上回ることで全体の財政収支は改善し、過去の財政収支の累積からなる政府債務の抑制にもつながる。

また、財政収支や政府債務の規模の比較は、一般的に経済規模(名目GDP)に対する比率を用いるため、名目GDPの変化も重要な要素となる。基礎的財政収支が目標に沿って改善していくならば、名目GDP成長率が高く、かつ利払い額が小さくなるほど、政府債務残高対名目GDP比率はより抑制されやすくなる。現在、政府債務問題において話題を集める名目GDP成長率と長期金利の関係は、政府債務に対する利払い額が長期金利に等しいとみなすことで導かれる。

主要先進国(独自の通貨を有する先進10カ国及びドイツ、フランス、イタリア)において、1961年以降の名目GDP成長率と長期金利の関係を比較すると、実質成長率が高くなるほど、政府債務残高の抑制にとって好ましい「名目成長率>長期金利」が成立する事例(年数)は増大する。例えば、実質成長率が2%以下のケースでは成立事例が18%に過ぎないが、実質成長率が5%超のケースでは91%がこれに該当する。

だが、注目すべきことは1970年代以前と1980年代以降とでは明らかに特徴が異なることである。1961-1980年における成立事例は、実質成長率が5%超のケースで99%、実質成長率が2%以下のケースでも53%に達するが、1981年以降では実質成長率が2%以下のケースでは僅か6%、実質成長率が5%超のケースでも63%しか該当しない。より細分化しても、1980年代以降は「名目成長率>長期金利」となる比率がほぼ一様に低下している。この間、金融市場の自由化の進展、グローバル化と国際資本移動の拡大など環境が大きく変化しており、各国の長期金利の形成にも影響を与えたことが示唆される。

実質成長率が高くなるほど、名目成長率が長期金利を上回りやすくなる傾向は完全には消滅しておらず、成長率の改善とデフレからの脱却は、日本の政府債務抑制にとって好ましい変化ではある。だが、名目成長率と長期金利の関係は安定的ではない。1970年代以前の状況が復活することを前提にして、政府債務の抑制を目指すのは適切ではない。

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