米国からアジアへの資金フローと

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2006年02月02日

  • 取越 達哉

よく知られているように、米国は世界最大の証券投資受入国である。ただその一方で、日本や英国などを上回る、世界最大の対 外証券投資国でもある。とりわけ 株式投資のウェイトは大きく、世界の株式時価総額(米国を除く)のうち1割強を保有するほどの規模となっている。

米国からの株式投資は近年増加傾向が強まっており、2005年は11月までの段階ですでに1082億ドル(約12兆円)と、既往最高であった2003年の 水準を上回っている。1082億ドルのうち、日本向けは353億ドル(約4兆円)、アジア地域向け(※NIEs4、ASEAN4、インド、中国の計とし た)は209億ドル(約2兆円)であり、全体のほぼ半分が日本・アジア地域に向けられたことになる。

米国からの日本・アジア地域向け株式投資増加は、近年の特徴の一つである。振り返ってみると、日本向けは99年頃から、日本を除くアジア地域向けは 2003年頃から、増加傾向が強まった。もちろん増加傾向が強まったといっても、実際には大きな変動をみせるが、少なくとも売り越しの期間はそう長いもの ではない。

米国からの日本・アジア地域向け株式投資増加の背景には、それら国・地域のファンダメンタルズの改善や、会計制度、ディスクロージャー制度の見直しなど投 資環境の改善に加え、これまで保有比率が低かったことを指摘できる。それを表す一つの尺度として、【米国人のポートフォリオに占める日本・アジア地域株式 のシェア】を【世界株式時価総額に占める日本・アジア地域のシェア】で除した値を計算してみると、それぞれ0.21、0.15と、平均水準(すなわち、米 国人のポートフォリオに占める米国外株式のシェア/世界株式時価総額に占める米国外株式のシェア)である0.26に比べ確かに低い(2004年末)。 2005年中はそれら国・地域に向けて大規模な株式投資が行われたが、試算によれば、平均よりも低い状況は依然解消されていないと見られる。

債券についても、米国人の日本・アジア地域の保有比率は未だ低く、今後増加する余地は十分に残されている。ただし株式投資と異なり、債券投資については増 加の兆しはまだ表れていない。
 

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