地銀の今後の方向性

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2006年01月19日

10 年来の重荷であった不良債権問題がようやく峠を越し、私の担当している地銀業界もやっと正常な状態に戻ってきている。直近の決算では、不良債権処理コスト の軽減や貸倒引当金の戻り益などもあり、利益は大きく回復してきている。しかし、冷静に今後を見通して見ると、これから成長が見込める分野は実は限られて いる。

地銀の収益を以下の5つの分野に分けて考えてみよう。
(1)企業向け貸出
(2)個人向け貸出
(3)有価証券運用
(4)金融商品販売の手数料
(5)その他の事務手数料

(1)については、貸出量は中期的に横ばいか、せいぜい微増。貸出金利は他の金融機関との競争という外部要因によって決まってくるが、過当競争で低下傾向 か、良くて現状維持となろう。つまり、一般的には成長はあまり見込めないということだ。

(2)については、(a)住宅ローン(b)消費者ローンに分けると、前者はここ数年地銀の数少ない成長分野だったが、ここへ来て伸びてはいるが伸び率は鈍 化してきており、貸出金利もダンピング気味となっている。後者は、地銀にとっては昔のいわゆる「サラ金」のイメージもあり、まだ本格的には展開していない 所も多いが、本気でやればまだ伸びる分野であろう。

(3)については、ここ数年のマーケット金利の低下などで、収益が大きく低下したが、やり様によっては大きく収益に寄与する部分である。また、規模が小さ かったり、ブランド力が乏しかったりしても、不利になることなく、大手金融機関とも渡り合える分野である。そもそも、地銀などは総資産の3~4割が有価証 券運用に恒常的にまわっている現状の割には、経営資源をあまり重点配分していないような気がする。

(4)は、今後の最大の成長分野である。投信に加え、保険も段階的に販売解禁となり、今後は多種多様な金融商品が銀行で販売されることになる。日本の個人 金融資産が預金偏重から欧米並みのバランスになってくると考えると、まだまだ成長の余地は十分ある。今後銀行は、預金残高を誇るのではなく、預金を含めた 預かり資産残高を競うことになるであろう。

最後に(5)については、欧米のような預金口座の残高維持手数料などが一般化しない限り、ほぼ横ばいということになろう。

地銀業界は、従来、(1)が圧倒的な本業という認識が強かった。(1)が重要だということは今後も変わらないが、今後の成長の余地という意味では(2) (3)(4)の重要性がかなり増してきている。今後は、(2)(3)(4)も本業として徹底的に注力することが必要となってこよう。

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