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プロフェショナル・インテグリティの時代

2006年01月11日

飛田 公治

2006年という年を認識するにあたり、昨今の世相を鑑みれば、国内では脱線転覆事故や耐震偽装建築等、旧来の倫理観・価値観の崩壊を感じさせるような事件が続発し、不透明な社会におけるリスク管理の困難さを思わせる。また、残虐な幼児誘拐殺人等、地域社会の安全性が脅かされるという旧来の社会の枠組み・価値観が溶解していく非連続的な転換点にあるようにも感じられる。グローバルにみても従来と異なるテロリズムの横行等、20世紀型の統治システムへの揺らぎを感ぜざるを得ない。

さて、いわゆる専門家と称する建築士等が耐震を偽装する等のモラルハザードが起きた際に、本来そのようなエージェンシー・コストを低減させる為に働くべきモニタリング機能さえも崩壊してしまったという事実は、年金資産運用に携わるリスクマネージャーたる我々に強い衝撃を与える。コンサルタントや運用執行理事は適正にエージェンシー・コストをコントロール出来ているのだろうか。また、専門家としての条件とは何であろうか。これらの点について、今一度整理をしておくべきであろう。

コンサルタントとして技術的適格性を有する事は当然であるものの、国際的基準であるILOの経営コンサルティングの基準で一番強調される要素がProfessional integrity(専門職業としての誠実性)である事を厳しく我々は再認識すべきである。まさに、動中の工夫とも言える知行合一の世界こそ、考える事(思)を深化させて戦略構築の工夫を行い、智慧の完成に結びつかせていくという仕事に従事する専門職にとって最も重要な考え方というべきものであろう。2006年の重要な理念は、昨年の反省を含めて「インテグリティの時代」と認識したい。

さて、2005年度年金決算は非常に明るい結果が予想され、年金財政上も一息ついた状態である事から、2006年はいよいよ団塊の世代の退職に備えた中長期運用戦略の再検討が行われる年であろう。そのためには、入念な負債分析とキャッシュ・フロー流列のチェックが重要であり、今後のキャッシュ・マネジメントの方針を考える事は戦略構築の不可欠な要素となるものと考える。ただし、そこで要求されているのは、単なる長期均衡モデルを使用するALM技術ではない。年金ファンドの運営者として、十分に深みを持ったストラテジー構築に注力すべき時代であると考えられる。

通常、戦略とは、持続的競争優位性を達成する為の位置取りを構築する事と定義される。バブル崩壊以降、金利上昇を現実のリスクとして受け入れるかどうかを検討することが必要となっており、本年は、このような観点からの持続的な意志の確認が必要であると考えられる。運用機関・コンサルタント・年金数理人・運用執行責任者等の「年金関係者」に背負わされる責任は、従来に増して重いものとなろう。

さらに、運用コンサルタントとして考慮すべき点は次のようなポイントではないかと思料している。(1)米国会計基準変更に伴う年金債務を本位とする投資の行方、(2)α・β戦略分離の方針徹底、(3)ポータブルα戦略の検証と構築やオーバーレイ戦略の意義、(4)ヘッジファンド運用におけるロング・ショート運用の効果の検証、(5)新たなクオンツ運用の導入と検証、(6)ファンダメンタル・インデックス等の新しいベンチマークの検証と導入、という論点である。

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