日本銀行の独立性

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2006年01月06日

  • 田谷 禎三
昨年の秋口以降、量的緩和からの脱却に関する議論が盛り上がってきている。早期脱却を示唆する日銀に対し、政府は慎重な対応を求め、政府・日銀の関係が緊張してきている。そうした中で、日銀の独立性が時として問題となってきた。政治家の中には、「日銀は政策目標を独自に決める権限はなく、あるのは政策手段の選択に関する自主性である。それが分からないようであれば、日銀法改正も議論しなければならない。」、とまで言う向きもある。では、そうした点について法律ではどうなっているのだろうか。

日銀法第三条は、「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」、また、その第二項では、「日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない。」、としている。つまり、日銀の政策運営に関する自主性は尊重されなければならないが、それは情報開示の徹底による透明性の確保が前提となる。日銀サイドはこの第三条が尊重されることを望むが、政府・政治サイドは、第四条を強調する。

第四条は、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」、としている。これを、日銀として、常に時の政権と経済成長率あるいは物価変化率に関する数値目標を一致させることが必要である、とまで解釈するのは行き過ぎのように思う。金融政策運営の視点は、政府の年度計画に比べると長めと言えるのではないか。そうした長めの視点の重要性ゆえに、日銀の自主性は尊重されることが必要なのではないか。もっとも、そうした尊重は実績を積み重ねることによって勝ち取っていく面もある。

現状においても、政治サイドからの批判が出たからと言って、日銀として、既定の方針を変えては、信任を失うことになりかねない。もっと、相互に建設的な対話が必要のように思う。

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