ヘッジファンドのリスク管理

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2005年12月20日

  • 田中 裕文
ヘッジファンドに対する投資は、本邦企業年金の資産運用においても広く行われるようになってきている。その投資目的は、主に分散効果や絶対収益を期待するものであるが、国内株式が高騰している本年では、既に以上のような期待値は下がってしまったかもしれない。

一方、より効果的なアクティブ運用の形態としてヘッジファンドを捉える考え方もあり、伝統的な資産クラスとの垣根が、徐々に低くなっているようにも感じられる。

ただしリスク管理の点においては、ヘッジファンドの投資内容に関する情報開示は限定的であることから難易度が高く、不充分な状況にあると感じている年金スポンサーが少なくない。具体的には、ヘッジファンド投資を行う目的・期待される効果を実証的に確認することや、ヘッジファンドを組入れることにより、ポートフォリオ全体でみたリスクの所在を認識することが挙げられる。

ヘッジファンドの投資スタイルを理解するための一助となる分析手法としては、感応度分析が考えられる。同分析はヘッジファンドのリターンと、市場の動きを代表する要因(ファクター)との関連性を捉える(回帰分析する)ものであり、各商品において、そもそも採用されている運用戦略を解き解すことに役立つ。

要因は株価、スタイル・バイアス(小型・バリュー)、市場変動性、金利、クレジット・スプレッド(事業債と国債の利回り格差)等が考えられる。

大和総研では、本邦企業年金向けに提供されているファンド・オブ・ファンズをはじめ、様々なヘッジファンドの感応度分析を試みた。その結果、同商品をポートフォリオに組入れることにより、米国株におけるスタイル要因・市場の活況度、クレジット・スプレッド、転換社債市場、金利動向等、様々な金融市場の影響を受けやすくなることが示唆された。

絶対収益」は魅力的な言葉であるが、それに対応するリスクを理解するには、マネージャーへの内容の濃いヒアリングが必要である。年金スポンサーには、商品提供者以外からの情報も手元に置いて面談に臨むことをお薦めする。

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