地方債における政府資金縮小

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2005年11月28日

  • 星野 菜穂子
周知のとおり、財投改革等を受け、地方債において主要な引き受け手であった政府資金の縮小が進んでいる。来年度の地方債計画案でも縮小傾向は続き、政府資金は4.5兆円、全体額の3割程度となっている。このような地方債における公的資金は、事業の性格、および財政規模等による事業実施団体の資金調達能力の観点から、その必要性が認められている((財)地方債協会「地方債に関する調査研究委員会報告書」等)。確かに、地方債計画の事業別地方債と充当資金の関係をみると、基礎的行政サービスとして政府資金の重点確保が方針とされている事業、例えば、一般公共事業、義務教育施設整備資金などは、地方単独事業系統などの地方債とは対照的に、政府資金充当割合が高くなっている。しかし、これらの事業においても、そもそもの政府資金が縮小していく中で、中長期的には充当割合が低下していっている。また許可額でみると、市区町村での資金構成にはほとんど変化が見られないのに対し、都道府県・政令市では政府資金縮小が顕著である。なかでも市場公募団体や政令市では、事業の性格において政府資金確保の指針が打ち出されているものについても、政府資金充当割合の減少、市場公募化がみられる状況にある。今後、政府資金の持続性如何によっては、このような状況が、少なくとも都道府県や政令市のレベルにおいては交付税依存の多寡や財政状況に関わらず広がる可能性が示唆される。一層の市場化を前提とすれば、これらを踏まえた上で発行体や投資家のニーズに沿った商品性の改善や起債運営が模索されねばならないことを意味する一方で、公的資金の供給を通じて果たしてきた国の責任は、民間化、市場化に振り変わることでどのように考えられていくべきか、という問題もあろう。

今後、政府系金融機関の改革、ことに公営企業金融公庫の改革とも絡んで、地方債における政府資金、公的資金の縮小に伴う問題は注目される課題である。「官から民へ」「地方のことは地方に」とはいうが、地方の資金調達におけるその中身、すなわち公的資金の代替としての市場化の実現性、その影響や意味、国の責任・役割等々、より具体的で詰めた議論が必要だと思われる。

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