リース会計の検討再開

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2005年10月26日

  • 吉井 一洋

リース会計に関するASBJ(企業会計基準委員会)での審議が再開された。リースのうちファイナンス・リースの会計処理は、売買処理を原則としている。しかし、所有権移転外のファイナンス・リースには、注記を条件に、賃貸借処理を認めており、大半の企業が賃貸借処理を採用している。この例外処理を廃止し、売買処理に一本化することが検討課題となっていた。10月14日の委員会でリース会計が審議されたが、この委員会で「売買処理への一本化が決定される」との新聞報道がなされたことから、1週間前に委員会の傍聴の受付が開始されるや否や申し込みが殺到し、その日のうちに傍聴の申し込みが締め切られた。当日はリース会計に関する審議が終わると、傍聴者の半数近くは、他の審議を傍聴すること無く退席していった。おそらく、業界関係者等であったと思われる。当日の委員会では、ファイナンス・リースの会計処理を、基本的には売買処理に一本化する方向で審議する旨が、概ね了承された。詳細は、今後、専門委員会で審議される。

リース会計の検討は、2002年8月に開始されたが、2003年7月に議論が中断され、2004年3月に、税務との調整が不可欠ということで、一旦、業界に検討を委ねる旨が決定された。1年後の2005年3月にリース事業協会から報告書が公表された。同報告書で売買処理に代わる三つの案が提示されたが、税務当局との調整は行われなかった。結局、業界団体での検討を経由し、今回、ようやくスタート時点に戻ったという状況である。

10月14日の審議でも、売買処理一本化という方向性を出すほど審議していない、税務との調整が確保されるまで適用を待つべきとの反対意見が産業界側から出された。しかし、検討を開始して既に3年が経過しており、ASBJの結論も税務に縛られる性格のものではない。会計基準変更によってリース業界が壊滅的な打撃を受けるのは望ましくないが、特定の業界への過大な配慮は、今後の会計基準の検討において悪しき先例を残すことになる。いたずらに結論を先延ばしすることなく、審議を進めることが望まれる。

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