塞翁が馬

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2005年09月22日

  • 清田 瞭

衆議院選挙は、自民党の地滑り的大勝利で終わった。郵政民営化の是非を問ういわゆる国民投票的選挙として争点を絞り込んだ小泉自民党、抵抗勢力を排除し女性の刺客を放ったマドンナ戦術の巧みさ、保守本流の自民党を改革政党として国民に広く認知させたイメージ戦略、等々、後講釈的な解説は多々あるが、いずれにしても与党で3分の2以上の327議席を占めるほどの結果を説明できるものはあまり無い。やはり、国民が真の改革を望み、「郵政民営化は改革の本丸であり、郵政民営化が出来ず、ほかの改革など出来るわけがない。」という小泉首相の主張が国民の大多数の心を捉えたと素直に認めるべきではないだろうか。

自民党をぶっ壊すといって登場した小泉首相がこれまでの4年半の在任期間中に過去の自民党の意思決定のやり方を完全にぶっ壊し、閣僚の任命のあり方、経済財政諮問会議を通じた官邸主導の政策決定、派閥や族議員の存在の弱体化、金融再生プログラムにもとづく大手銀行の不良債権問題の解決、財政出動なしの民間主導の経済再生、不十分とはいわれても、これまで誰も手をつけられなかった道路公団の民営化など、改革の先頭に立って派閥の親分や族議員といった抵抗勢力と戦いながら進めてきたことが評価され、今回の郵政民営化法案の衆議院での僅差の可決の後の勝ち誇った反対派議員の顔とそれに続く参議院での否決への流れを見て、多くの国民が、抵抗勢力がいかに日本の改革への障害になっているかを見抜いたに違いない。

一方、もし今回の郵政民営化法案が参議院で少差で可決していたら小泉首相はいまごろ選挙も無く、ライフワークである『郵政民営化』を成し遂げた宰相として悠々とはしていたであろうが、政界の関心は来年9月のポスト小泉に集中し、レイムダックへの道を急いでいたのではないだろうか。この点を考えると、参議院での否決の流れを作った中曽根弘文氏は皮肉なことに、今回の自民党の純化作戦と衆議院大勝利への大功労者ということが出来よう。参議院の否決なしには今回の解散はありえないからである。

参議院否決直後の小泉首相や竹中大臣の沈痛な表情と反対派議員の勝ち誇った顔からは約1カ月後の衆議院選挙がよもやこんな形で決着するとは想像も出来なかったであろう。まさに「人間万事塞翁が馬」とはよく言ったものである。

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