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中国、7000億ドルを超えた外貨準備の有効活用の好機

2005年08月19日

経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

6月末の中国の外貨準備高は7110億ドルに達した。年初からは1010億ドルの増加であり、このペースで行けば、近い将来に中国が日本を抜いて世界一の外貨準備保有国となる公算が大きい。外貨準備の積み上がりは、貿易収支黒字の急拡大や、投機資金の流入などによるものであり、当局は、輸出や直接投資を装った違法な資金が中国に流入するのを抑制するための措置を相次いで打ち出している。具体的には、外資系企業の借入限度額規制の強化などであり、今年3月以降の不動産価格抑制策の導入は、投機資金の期待収益率の低下を狙った措置としての側面を持つ。

しかし、外貨準備の急速な積み上がりの抑制と同等か、それ以上に重要なのは、巨額の外貨準備を如何に有効に活用するかであろう。資産運用の内訳は未公表であるが、今年3月に郭樹清・前国家外貨管理局長は、「海外の信用度の高い政府債券、社債、国際金融機関などが発行する債券が中心」と述べており、低リスク・低リターンで高い流動性を有する海外債券での運用がほとんどと推察される。こうしたなか、中国人民銀行は、金融システムの安定維持を目的に、外貨準備から、中国銀行と中国建設銀行に合計450億ドル(2003年末)、中国工商銀行に150億ドル(2005年4月)の資本注入を実施し、自己資本比率の引き上げと不良債権処理の加速を促した。いずれは四大国有商業銀行の最後の一角を占める中国農業銀行への資本注入が実施されよう。先日面談した中国人民銀行研究局の唐旭局長によれば、「中国は外貨準備が1000億ドルを超えた時点から、有効活用のための議論がなされ、ひとつの結論が国有商業銀行への資本注入であった」という。

外貨準備の役割は、国際支払能力の保証と金融システム全体の安定維持であるが、この縛りが却って、中国経済全体の質的向上に資する有効活用を妨げてしまっている感がある。しかし、7000億ドルを超える外貨準備を保有するに至った今こそ、より大胆な運用を開始する好機であろう。例えば、外貨準備から一定割合を拠出して、内外の資産に投資するファンドを立ち上げ、その運用益で、改革・開放政策の恩恵を享受できていない、農村部や内陸部の発展のためのインフラ投資や設備の購入などを行うのである。その過程では、当ファンドが、国内株式市場への新規資金の流入要因となり、QDII(中国の機関投資家による外国証券資産投資)の有力な資金の出し手となる可能性を秘めることになる。

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