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資産管理型サービスに適した情報技術の活用とは

2005年08月05日

伊藤 慶昭

米国金融リテール業界においては上位富裕層(High-net-worth)と並び、マス富裕層(Mass Affluent)をマーケティング対象とする動向が顕著になりつつある。マス富裕層とは10万ドルから100万ドル(約1,120万~1.12億円、1ドル=112円換算)の運用資産を持つ世帯を表わし、間もなく退職時期を迎えるベビー・ブーマー世代に概ね該当する。Tiburon Strategic Advisorsの調査によると、マス富裕層は米国全世帯の1/4を占めるとともに、個人資産の1/3までに成長している。これまで金融機関各社では、マス富裕層を対象に退職年金や遺産管理を中心とした資産管理型サービスを展開すると同時に、サービスの中でインターネット技術を全面的に駆使した各種ツールを提供してきた。

しかしながらオンライン・ツールに関しては、残念ながら過去に個人投資家の絶大な支持を得たものが登場したとは言い難い状況にある。その理由として、開始当初はツールで得られる結果内容が極めて単純か、あるいは一般の投資家向けとしては難しいというように、サービスの未熟が指摘されている。また包括的な資産管理では、サービスを提供する金融機関1社が他社の複数口座情報を握ることにつながるため、個人の責任で資産情報をオンライン・サービス上で提供することに、投資家と金融機関双方に抵抗感があった。さらにサービスのオンライン化という観点から見れば、その位置付けは依然としてコスト削減を目的とした「自動化」、「省力化」に留まり、どちらかと言えば金融機関の都合が優先されてきたようにみえる。

一方でマス富裕層は年配者も多いことから、対面サービスやコールセンターの希望割合が高いことが想定され、高度な資産管理ツールが開発されても、情報技術や金融知識の習得を個人投資家に押し付ける従来の方式ではむしろ敬遠される可能性がある。

従って今後、資産管理型サービスにおける情報技術の適用形態は2通りあると考える。1つ目は個人投資家をエンド・ユーザーとするツールではなく、営業員向けにツールを提供することである。営業員が洗練されたツールを駆使することで、営業員のみならず対面サービスのレベル向上が期待できる。さらに2つ目として、リアルタイムな双方向コミュニケーション機能を採用することで、対面サービスそのものをシステム上に載せてしまうことも有効である。特に後者については、金融サービスがメディア機能に組み入れられることで、どこに居ても営業員とのコミュニケーションが確立でき、その場で決済できるといったユビキタスな環境が金融サービスの将来像と捉える向きもある。

いずれにせよ資産管理型サービスにてシェアを獲得していくには、ツールやコミュニケーション機能など情報技術の全面的な活用が不可欠であることは以前と相違ない。今後、個人投資家のニーズに見合うサービス形態を構築した上で、そこに情報技術を活用していくことが鍵となるであろう。

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