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本格化する買収防衛策の導入

2005年07月15日

古島 次郎

(要約)
買収防衛策を導入しようとする企業が相次いでいる。3月期決算で防衛策導入を表明した企業は約100社。積極的な防衛策といえるライツプランの導入はわずかで、授権資本枠の変更など定款の変更にとどまる企業が大半。しかし、株主総会でこの定款変更が一部否決されるなど、必ずしもすべての株主が防衛策の導入を歓迎しているわけではないようだ。今後、防衛策の導入に当たり、防衛策の合理性だけではなく、同時にどのような株主価値最大化の施策を示していけるかが注目されよう。

(本文)
昨年来のM&Aの本格化に伴い、今年はその対応策を導入する企業が相次いでいる。特に6月末は株主総会が集中することから、導入企業ばかりではなくその株主の動向も大いに注目された。

3月期決算で防衛策導入を表明した企業数は約100社であった(※1)。防衛策の導入を行った企業を業種別に見ると、電気機器が最も多く2割近くを占める。次いで情報通信、化学となっているが、特定業種に集中しているわけではなく幅広い業種にまたがっている。ただし時価総額別に見ると、時価総額1,000億未満が7割と過半を占めており、中小型銘柄で導入が進んでいることがうかがえる。業種ごとの特性よりも、買収時の金額的なハードルが比較的低い企業が導入を進めたようだ。

防衛策の内容を見ると、積極的な策といえるライツプラン(ポイズンピル等)を導入した企業は10社にも満たない(※2)。最も多かったのは、1)有事に取締役会で増資等が機動的にできるように、前もって定款に定める発行できる株式総数の上限である授権資本の枠を拡大する、で大半を占めている。次いで、2)有事に買収者から取締役を送り込みにくくするように、定款に定める取締役の定員の上限である取締役の定員数を削減する、3)決算期後からその決算期の定時株主総会までに新株発行等により新たに株主となった場合でも、議決権の行使を認めるようにするため、定款に定める議決権行使の基準日を変更する、の順となっている。いずれも定款の変更を伴うもので、重要事項を決める特別決議(※3)が必要となる。

株主総会で議案が否決されることも

買収防衛策となる定款変更議案が、わずかだが一部の企業の株主総会で否決された。必ずしもすべての株主が防衛策の導入を歓迎しているわけではないようだ。乱用的な企業買収に対する防衛策は合理的であるかもしれない。しかしその一方で、現経営陣の入れ替えにこれまで以上の制約を課す側面も否定できない。場合によっては、経営陣の入れ替えを通じて行われただろう経営効率の改善を阻害することもあり得る。さらなるコーポレートガバナンスの強化策、経営効率化の姿勢、企業価値最大化の新たなスキームなどが示されないまま防衛策だけを導入しようとすれば、経営者の保身とも受け取られかねない。今のところ、防衛策の導入の一方で経営効率化や企業価値最大化のスキームをセットで示した企業は一部に限られているようだ。来年以降の新会社法施行を前に、今後さらに防衛策の導入を目指す企業も増えてこよう。そのとき、導入しようとする防衛策のスキームだけではなく、むしろ同時にどのような株主価値最大化の施策が示されるかが注目される。

(※1)開示資料等を基に、大和総研調べ
(※2)具体的には、アイティフォー、サイバード、ペンタックス、ウッドワン、西濃運輸、TBS、イー・アクセス、広島ガス
(※3)特別決議は、総株主の議決権の過半数の株主が出席(定款により3分の1まで引き下げ可)した株主総会で、出席議決権の3分の2以上の賛成で成立する。

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