買収防衛策の導入

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2005年06月29日

  • 古島 次郎

この6月の株主総会では、企業買収防衛策導入への賛否が注目されている。3月期決算で防衛策導入を開示資料等で表明した企業数は、大和総研調べでは100件となっとなっている。防衛策の導入を行った企業を業種別に見ると、電気機械が最も多く2割近くを占める。次いで情報通信、化学となっているが、特定業種に集中している訳ではなく幅広い業種に跨っている。一方、時価総額別で見ると、時価総額1000億未満が67社を占めており、中小型銘柄で導入が進んでいる。業種毎の特性よりも、比較的買収時の金額的なハードルが低い銘柄が導入を進めたようだ。

防衛策の内容を見ると、積極的な策といえるライツプラン(ポイズンピル等)の導入は、ニレコ、松下、イーアクセス、西濃運、TBS、ペンタックス、ITFOR、サイバード、ウッドワン、広島ガスの10社に留まっている。最も多かったのは、(1)有事に取締役会で増資等が機動的にできるように、前もって定款の定める発行できる株式総数の上限である授権資本の枠を拡大する、で大半を占めている。次いで、(2)有事に買収者から取締役を送り込みにくくする定款が定める取締役の定員の上限である取締役の定員数を削減する、(3)決算期後からその決算期の定時株主総会までに新株発行等が行われ株主となった場合でも議決権の行使を認めるようにするため議決権行使の基準日を変更する、の順となっている。何れも定款の変更を伴うもので投票議決権の3分の2以上の賛成が必要な特別決議事項となる。

一部の企業では、買収防衛策となる定款変更議案が否決された模様。必ずしも多くの株主が防衛策の導入を歓迎している訳ではないようだ。防衛策の導入は合理的であるかもしれないが、経営陣の入れ替えに何らかの制約を科す側面もある。場合によっては、経営陣の入れ替えを通じて行われる経営効率の改善を阻害することもあり得る。更なる経営効率化の姿勢や企業価値の最大化の新たなスキームを示されないまま、防衛策だけを導入すれば経営者の保身とも受け取られかねない。今のところ防衛策の導入する一方で経営効率化や企業価値最大化のスキームをセットで示した企業は一部に限られている。来年以降の新会社法施行を前に、今後更に防衛策の導入を目指す企業も増えてこよう。そのとき、導入しようとする防衛策のスキームだけではなく、むしろ同時にどのような企業価値最大化施策が示されるかが注目される。

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