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中国が不動産価格抑制に本腰

2005年05月12日

経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

中国が不動産価格抑制に本腰を入れ始めた。中国人民銀行は住宅ローンへの特別優遇金利の適用停止を発表し、3月17日より、5年以上の住宅ローン金利は、従来の5.31%から、5.51%(下限金利)~6.12%(貸出基準金利と同率)に引き上げられた。さらに、3月26日付けの国務院弁公庁の通知は、「省政府が住宅価格の価格安定に全ての責任を負い、住宅価格の安定に失敗し、当該地域の不動産市場の急激な振幅を招き、経済の健全な運営や社会の発展に悪影響を与えた地域については、責任者の責任を追及する」と明記するなど、成長指向の強い地方政府に冷や水を浴びせる、厳しい内容であった。 

当局の住宅に対する見方は「住むためのものであり、投資商品ではない」との言葉に集約される。北京市のある高級物件の場合、単純投資利回り(諸費用などを無視)は5%と住宅ローン金利を下回り、賃貸収入でみた収益性は低い一方で、同物件の価格はこの1年で20%上昇、売却時のキャピタルゲインは大きくなっている。国内株式市場が長期低迷し、預金金利が低いなか、売却益を狙った投資商品として住宅への選好は高まるばかりである。

その一方で、居住目的の人にとって、住宅が高嶺の花となっていることも事実である。さらに、低中所得者向けのエコノミー住宅が住宅全体に占める割合は2003年の6.1%から2004年には4.6%に低下し、「リーゾナブルで良質な住宅を提供する」という当局の意図と相容れない状況となっている。また、中国ではここ数年毎年200万ムー~300万ムー(1ムー=6.7アール)の耕地が、基本建設用地(工場建設や住宅建設)に転用されており、このことは毎年200万人~300万人の農民が土地を失うことを意味するという。農業・農村・農民問題の改善を目指す現政権にとって、耕地から転用された土地の一部が投資商品としての住宅に利用されることへの矛盾が生じているとも考えられる。さらに、不動産開発融資や住宅ローンの不良債権化への懸念もある。

こうした状況下で当局による不動産価格急上昇の抑制が本格化したわけだが、通知に色濃く表されているように、その方法はより直接的な行政指導によるものである。当局の狙いは「価格安定=急上昇・急落の回避」であるが、消費者心理が悲観に振れた際のスピード調整の加速は、リスクとして認識しておくべきであろう。

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経済調査部
主席研究員 齋藤 尚登