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公的年金の抜本改革へ向けて

2005年04月22日

川岡 和也

公的年金の次の改革への議論が始まった。衆参両院合同会議で各党がそれぞれの考えを基に主張し合っている段階だ。その内容を概観すると大きく分けて、まず一般サラリーマンの厚生年金と公務員等の共済年金を統合するところから始めるか、それとも国民全体の公的年金の一元化を目指す議論から入るか、に意見は二分されている。隔たりが大きいように見えるこの議論、果たしてどの部分から入っていくべきか。

ここで政治家や年金の専門家ではない、一般の国民の視点から考えた場合は何が重要か。それは改革の方向性について納得感のある議論が成されること、すなわち、これからの議論とその進め方が信頼を得られるものであることが重要である。国民一般の印象としては16年の年金改正で、給付と負担の見直し論議を中心に、厚生年金の最終保険料率18.3%やモデルケースでの所得代替率50%以上の確保、マクロ経済スライドの導入等、目の前の解決しなければならない事項についてまずは急いで決定したというところであろう。そして短時間労働者や第3号被保険者の問題を含め根本的な問題は先送りになっていて、まだこれからという印象だ。そのため今は、将来的に年金をどうするのか、基本的にどのような考え方に基づいて構築し直すのか、その根本的な議論が期待されている。

公的年金制度再構築のポイントは大きく次の二つだろう。一つは、公的年金の単位を一人一人の個人ごとで考えるか、それとも夫婦あるいは家族を基本の考え方として水準・仕組み等を構築するかである。一見、アプローチが異なるだけでどちらも結果は同じと考えがちだが、基本的な視点をどこに置いて整理するかというのは議論がすれ違わないために重要である。二つ目は、現役時代の所得に比例した保険料や将来の給付体系を公的年金全体の基本に据えるかという点である。公的制度で所得比例の保険料に統一するということは、程度の差はあれ所得再分配機能を備えるということにもなる。日本の公的年金はもともと所得比例の考え方をベースに始まった経緯があるようだが、今後は制度全体について所得比例の仕組みを本当に目指すのか。根本的な再構築にあたってこの議論は避けて通るべきではない。ましてや「所得を把握するための申告が信用できない」ので、その議論は時期尚早というのは本末転倒である。単純に納税の観点だけから見ても事態を放置しているという印象を与え、説得力はない。

次の改革で具体的に何を行うか、現実的に何ができるか、という議論が必要なのは当然だが、それは将来の目指す形に向けてのステップとしての議論であることが重要である。昨年の年金制度改正で、まずは急務の問題に対応した。今度こそは根本的な問題を先送りせず議論してほしい。これが一般の国民が感じている偽らざる気持ちだ。

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