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ペイオフ解禁拡大と為替相場

2005年03月28日

亀岡 裕次

2005年4月1日にペイオフ(破綻金融機関からの預金払い戻し保障額を元本1000万円とその利子までとする措置)の解禁拡大を迎える。そのことは海外への資本流出を招き、円安につながるのだろうか。

2002年4月1日に「定期性預金」のペイオフが解禁されたときは、全額保護の「要求払預金(普通預金など)」へと資金が大量にシフトした。ただし、要求払預金は定期性預金に比べ流動性が高い分だけ利息が低いので、収益性を求めて預金以外の金融商品に向かう資金も少なからずあり、日本より金利の高い外国債券もその選択肢の一つとなった。しかし、ペイオフ解禁後の為替相場は円安にはならず、むしろ円高が進行した。なぜだろうか。日本の対外証券投資全体でみれば、4月以降に大きく増えたわけではなかったからだ。

当時、個人は外債での運用を増やす一方で、投資信託での資産運用を減らしていた。米国のエネルギー商社エンロンの破綻(2001年12月)を背景にMMFなど公社債投信の元本割れが続出したからである。投信を通じた間接的な投資を含めれば、対外証券投資はペイオフ解禁の2002年4月頃にかけて増えたものの、解禁後は伸び悩んだ。ペイオフ解禁に伴う海外への資本流出と円安効果があるとすれば、それは解禁後よりも解禁前に発生しやすいのかもしれない。

今回、ペイオフの対象となる「利息のつく普通預金」は、決済手段(支払手段)としての性格が強く、流動性が高い反面、相対的に利子率の低い資金である。したがって、高い収益性を求めて価格変動リスクの大きい商品に資金がシフトする割合は、定期性預金のペイオフ解禁時に比べて小さいだろう。ペイオフのリスクを回避しようとするなら、(1)金融機関を分散して1つの金融機関に預ける預金を元本1000万円以下にするか、比較的信用度の高い金融機関に預け替える、(2)普通預金から決済用預金(利息のつかない普通預金等)へ口座を振り替える、(3)個人向け国債や国内公社債投信などの低リスク商品へ資金をシフトする、といった方法が考えられる。

収益性重視で外債や外国公社債投信、株式投信などで運用しようとする資金もあろうが、その多くは2005年4月のペイオフ解禁拡大を待たずにすでにシフトしているか、今後の投資機会をうかがっている可能性が高い。近年の個人や企業による対外証券投資の拡大は低金利を背景とした資産運用のトレンドであり、必ずしもペイオフ解禁を意識したものではない。ペイオフ解禁拡大は預金保有者の資産運用を見直す好機にはなるものの、解禁直後に対外証券投資を増やす必然性はないはずだ。つまるところ、ペイオフ解禁拡大を契機に本格的な円安が始まるととらえるべきではないように思える。

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