公益法人制度改革への“当事者”の関心

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2005年03月23日

  • 経済調査部 市川 拓也

100余年ぶりといわれる公益法人制度の大改革が大詰めを迎えつつある。昨年11月19日には公益法人制度改革に関する有識者会議から「報告書」が行政改革大臣に提出され、骨子は同12月24日には閣議決定事項である「今後の行政改革の方針」の一部を構成する「公益法人制度改革の基本的枠組み」に反映された。平成18年通常国会での新法成立を目指し、目下、立法化へ向けた作業が進行中である。

以前、このコラムで「公益法人の“身の振り”」(平成15年9月25日)を書いた。当時、自民党総裁選や衆議院解散・総選挙に向けた動きが支配的であったことから制度改革の議論が停滞していた。しかし、そういう時こそ公益法人は来るべき時に備えて身の振りを真剣に考えておくべきだという内容であった。

それから約1年半の間で環境は大きく変わった。上記の基本的枠組みの具体化を目指し、公益法人制度改革に関する有識者会議は実に26回も開催され、その下のワーキング・グループでも非営利法人制度の議論が着々と進められた。一連の政治的イベントを終え、公益法人に限らず一般国民でも、少なくとも公益法人制度改革に多少の目を向けるくらいの余裕もインセンティブも働いてしかるべき環境となったと考えられる。

しかし、財団法人公益法人協会が行った今年1月中旬から2月上旬にかけてのアンケート調査(対象:公益法人9,170、及び有識者165、回収率計24.1%。同協会『公益法人』2005.3掲載)では、公益法人関係者の関心の低さが改めて浮き彫りとなる結果となった。「公益法人制度改革に関する検討が行われていることをご存知でしたか」という設問に対し、(1)知らなかった、或いは(2)知っていたが検討内容については注意を払ってこなかった、との回答が計49.1%にのぼったのである。

この要因として、(1)お役所任せでやってきた公益法人、(2)私益追求の志向が強い一般国民、(3)大衆受けを要請されがちなマスコミ、などが複合的に絡み合った結果であると推測されるが、上記「報告書」に「特に民間非営利部門による公益的活動が果たす役割とその発展は極めて重要」とあるように、本来、国民全体を巻き込む極めて重要な改革なはずである。個々の公益法人への影響においては新法施行後の経過措置の間に検討するという考えも成り立ち得ないわけではないが、筆者としては、“公益”に設立根拠をおいて活動してきたことを鑑み、法人自身の損得を超えて広くこのテーマに取り組んでもらいたいと考える。

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