政治の季節を迎える欧州

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2005年03月17日

  • 岡田 恭二

「今年から07年にかけて、昨年新規に加盟した10カ国を除く旧EU15カ国のうち、12カ国で総選挙が実施される予定になっている(うち2カ国は今年既に実施)。この中には、英(今年5月実施か)、独・伊(06年)、仏(07年)といった主要国も含まれている。

現時点では、これら主要国に共通しているのは、現政権与党が苦戦しそうなことである。とくに、景気回復が遅れているドイツやイタリアでは、経済政策に関して現政権党に対する批判が根強く、与党の支持率は低迷している。 一方、対抗すべき野党にも覇気が感じられない。政策面で新鮮さや明快さが乏しく、有権者に十分アピールする内容になっていない。有権者は現在の政策に不満をもっているが、優れた対案が提示されないという状況に置かれている。

そうした背景には、欧州主要国の抱える問題の深刻さがあるように思われる。例えば、英国では、今回の総選挙の争点としては、年金や医療制度、教育問題、テロ対策、移民問題などが注目されている。他の主要国では、これに景気対策や経済構造改革が加わる。経済構造改革に代表されるように、これらは将来に渡って影響を及ぼす制度改革を含んでいる。

経済の活性化と所得格差の拡大、人口の老齢化と社会保障の負担・給付バランス、労働市場の流動化と移民受入れ、それに伴う社会問題など社会に大きな影響を与える問題が多い。その解決を巡っては国内に深刻な意見対立を引き起こすものがある。

さらに複雑にしているのは、社会民主主義政党と保守政党という2大政党の支持基盤と、直面する問題における賛否が必ずしも対応していないというネジレ現象が見られるためである。
 今回の総選挙で、これら主要国が直面する課題に対する解決の方向性が有権者によって明確に意思表示はされないだろう。解決への摸索の時期が暫く続こう。

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