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中国ベンチャーの海外上場

2005年03月09日

篠原 春彦

中国のベンチャー市場の現況をみると、ベンチャーキャピタル、及びインキュベーターなどのベンチャー支援機関の増加や、政府の積極的な支援制度により、ベンチャー市場は活発化しているものの、重要な出口(EXIT)先である国内証券市場に課題を残している。中国企業に投資しているベンチャーキャピタルの2003年度のEXIT状況をみるとEXITした企業のうちIPO(新規公開)でEXITしたのは全体の15.0%(企業数ベース)に過ぎない。主流は株式譲渡(37.4%)で、これにMBO(28.8%)、清算(18.8%)が続く。IPOした企業も国内ではなく香港のGEM(中小型成長株市場)市場など海外市場への上場が目立っている。

IPOによるEXITが少なく、なおかつ海外市場へのIPOが目立っている背景には国内証券市場が未発達という問題がある。中国の証券取引所は上海と深センの2ヶ所で、それぞれ、837社、536社の中国企業が上場(流通株=A株、B株)している(2004年末現在)。しかし、この銘柄の大部分が国有企業であり、発行済み株式の6割強を国や国有法人など公的機関が「非流通株」として保有している。この非流通株の存在が特に問題で、非流通株がいずれは流通株に転換されるとの思惑=需給悪化懸念から中国の株式市場は低迷を続けており、IPOが難しくなっているのである。

加えて、非流通株は国有株などのほか、法人株、発起人株なども含まれるが歴史的な経緯から現行制度では流通が認可されていない。つまり、中国企業が市場でIPOができたとしても売り出しはできず、公募分のみが流通株となる。これでは、ベンチャーの創業者にとっては公開による創業者利益の取得の道が閉ざされているうえ、ベンチャーキャピタルもIPO時に資金の回収ができない。このことが、ベンチャー企業とベンチャーキャピタルの発展の阻害要因となっていることは言うまでもない。

もう一つの課題は中国には新興企業向けの市場である「創業板」市場が不在であることである。1990年代後半より、創業板の設立については論議がなされているが、様々な理由からその実現が遅れている。2004年6月に中小企業に特化した資金調達の場として深取引所に「中小企業板」(ベンチャーとは異なる)が設立されたが、IT関連などの魅力的な銘柄がないことや、上場企業の不祥事などもあり、早くも機能不全に陥っている。

創業板市場設立に賛成派の意見は、市場設立によって小型の有望企業への資金調達の道が開かれ、中小のハイテク企業の成長を刺激し、中国のハイテク産業の実力向上につながるというものである。一方、反対派の意見は、(1)上海、深セン市場などのメインボード自体の投機性が高く、創業板市場の開設は市場をさらに不安定化させる、(2)国内市場の監督管理体制が不十分である、(3)上場を利用し、ブラックマネーが暗躍する可能性がある、というものなどである。大きく賛否がわかれている状況にある。

中国の発行株式の約6割を占める非流通株の問題は中国株式市場の大きな構造的課題であって早期に解決するのが難しい。創業板市場の創設にも時間がかかりそうである。こうした国内証券市場の問題から、中国ベンチャー企業の海外株式市場への上場の動きは今後も続きそうである。

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