新興市場への資金流入は増加続く

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2005年03月08日

  • 佐藤 清一郎

先進国での金余りと新興国経済の高成長やリスク軽減を背景として、先進国から新興国への資金の流れが活発となっている。1990年代後半に起こったアジア金融危機後、急速な勢いで新興市場から資金が逃げたが、現在は、その動きの面影はない。資金フローの状況は、90年代後半とは様変わりしている。

現在、新興国には先進国が及ばない勢いがある。先進国経済が約3~4の成長であるのに対して、新興国は、7~9%と倍以上のスピードで拡大している。ブラジル、ロシア、インド、中国の、いわゆるBRICsと呼ばれる国への民間部門からの資金流入額(ネット)は、2004年2790億ドルとなった。2003年から比較すると、684億ドルの増加である。

形態別では、堅調な直接投資に加えて、銀行貸付、債券等による調達が増加している。銀行貸付、債券による調達が増加していることは、これら地域での投資リスクが低下してきていることを意味している。2004年の民間資金流入額(ネット)2790億ドルの内、直接投資は、約46%の1295億ドル、銀行貸付は、約17%の492億ドル、債券等による調達は、約23%の646億ドルである。

地域的には、アジア地域への流入量が最も多い。2004年2790億ドルの内、アジア圏へは約52%の1463億ドルの流入となっている。次が、ロシア・東欧圏へで、約35%の974億ドルである。この2地域で、全体の9割弱を占めている。ラテン・アメリカへは、約9%の261億ドル、中東・アフリカへは、約3%の92億ドルである。国別では、中国とロシアへの資金流入額が多いのが目立つ。この2国で、2003年から2004年の民間資金フロー変化額の内、約半分はこの2国の動きで説明できる。対外直接投資残高(対GDP比%)の推移を見ると、中国が圧倒的な勢いで割合を高めている他、ブラジル、ロシア、インドも上昇方向である。

中国やロシアなどを中心に良好な経済状況が続いていることからすると、これら地域での資金需要は引き続き強いと考えられ、当面、ネットで見た資金流入額は、増加方向という現在のトレンドを維持していくものと見られる。こうした中で、これら地域の投資対象先としての認知度も高まっていくであろう。

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