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集中する経常赤字と人民元制度変更の効力

2005年02月25日

尾野 功一

米国の経常赤字に対する関心が強い。日米貿易摩擦に揺れ、強烈なドル安が発生した1980年代半ばのプラザ合意前後を彷彿させるかのようである。

だが、当時と比べて現在は対外不均衡の中身が異なる。世界の経常黒字及び赤字合計額に占める各国・地域ごとのシェアをみると、プラザ合意前後の1985年-1987年の平均では、日本(黒字シェア41.5%)、ドイツ(同18.1%)、台湾(同8.1%)の3カ国・地域で世界の経常黒字の約3の2を占めており、これらの国・地域と米国(赤字シェア56.0%)との対立が基本的な構図であった。

ところが、2001年-2003年の平均では、経常赤字は米国(赤字シェア70.8%)に一段と集中しているのに対して、経常黒字は上位10カ国・地域を合計しても(64.9%)、当時の上位3カ国・地域合計のシェアには及ばない。近年最も関心を集める中国は3番目で、6.1%のシェアにとどまっている。つまり、当時と比較して現在は、経常赤字は米国により集中しているのに対して、経常黒字は逆により広い範囲に拡散している。

この結果は、米国の経常赤字削減と人民元の制度変更との関係について、慎重な見方を促すものかもしれない。プラザ合意時は、「米国の貿易赤字に占める日本の比重が高く」、かつ「世界の経常黒字に占める日本、赤字に占める米国の比重が高い」ことを背景に、「円を中心とした先進国通貨に対するドル安誘導による米国の経常赤字の削減」が意図された。そして、これらの関係は比較的明確であった。

現在も、米国の中国に対する貿易赤字の拡大は、当時の日本に対するそれと類似する。ところが、中国の貿易収支は対米国を除くと2000年から赤字に転じ、その後は急速に赤字が拡大している。ゆえに、中国の世界に占める経常黒字のシェアは当時の日本と比べてかなり小さい。

この条件のもとで、期待される人民元の制度変更(元高ドル安)による米国の経常赤字の削減効果は、当時の円に対するドル安に匹敵する効果を持つのか不明である。単なる元高ドル安だけであれば、価格競争力が改善する近隣の国・地域に生産がシフトし、米国の対中赤字は減少する代わりに、他の国・地域に対する米国の赤字は逆に増大し、米国全体の経常・貿易赤字の削減は思いのほか限定される可能性もあろう。

◆世界の経常黒字・赤字に占めるシェア

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