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「都市中国」と「農村中国」の融合は加速できるのか?

2005年02月24日

肖 敏捷

農暦の新年である春節(旧正月)は、中国で最も大切な伝統行事である。今年の春節も例年通り、民族大移動と呼ばれる帰省ラッシュ、そして鳴り響く爆竹でにぎやかに迎えられた。10日間近い連休の間に、二つの記事が目に止まった。一つは、温家宝総理が河南省を訪問し、エイズ患者を見舞った記事、もう一つは、遼寧省の炭鉱でガス爆発事故が発生し、214人の作業員が死亡したという記事である。

批判を恐れずに言えば、旧正月というお祭りムードの中、この二つの記事は大きな反響を呼び起こすほどのものであるとは言い難い。前者については、胡錦濤~温家宝の新政権が「以人為本」(国民を最も大切にする)という親民政策を打ち出していることから、国家指導者が春節を広東省や海南島といった避寒地ではなく、貧困地域の人々と一緒に過ごすことは十分に想定されたことである。後者については、1949年の新中国建国以降、2番目に多い犠牲者を出したといわれる大惨事ではあるが、炭鉱事故が後を絶たず、2004年の1年間だけで犠牲者合計6,027人に達した現状を勘案すれば、衝撃的な事件と受け止める国民がどれだけいるのかは疑問である。

しかしながら、この二つの出来事は、まもなく開催予定の全国人民代表大会における政策決定に大きな影響を及ぼすに違いない。この二つの記事の当事者であるエイズ患者と炭鉱労働者はほとんどが農民である。また、前者は生計を立てるための売血で感染し、後者はわずかな手当てを獲得するための旧正月出勤中に事故に遭遇していることから、貧困が彼らを犠牲者にした最大の原因である点も共通している。「三農問題(農村、農民、農業)」への注目が高まる中、北京、上海、広州といった「都市中国」の高成長と繁栄が、「農村中国」の利益を犠牲にして築かれている不条理さを、この二つの出来事を通じて改めて痛感させられたといえる。

一方、都市部との所得格差が一段と拡大すれば、社会秩序の安定維持が難しくなるとの観点から、政府は、農民の所得の改善を至上の命題として取り組んでいる。しかし、もとはといえば、中国の政治、社会、経済などの国家運営が都市部を中心に行われていることが、こういった格差を生み出した最大の原因ではないかと考えられる。例えば、農民たちは3K仕事を担うといった形で底辺から都市部の繁栄を支えているにもかかわらず、都市部の市民と同様の生存権は認められていない。よって、戸籍制度の廃止、国民全員に平等な市民権を与えるなど、「農村中国」と「都市中国」の融合を目指さなければ、税金の減免などの農村振興策は一時しのぎとなりかねない。これ以上の犠牲者を出さないという強い決意を見せている温家宝政権が大きな一歩を踏み出すことができるかどうか、中国の農村問題は大きな転換点を迎えようとしている。

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