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ASBJ、資本概念見直しの検討を開始。投資指標に大きな影響も

2005年02月07日

吉井 一洋

ASBJ(企業会計基準委員会)は、2005年1月11日に、貸借対照表の貸方科目の表示方法を見直すための専門委員会を立ち上げることを決定した。

ASBJが昨年の12月28日に公表したストック・オプションの公開草案では、ストック・オプションを借方で費用計上すると共に、貸方では資本でも負債でもない中間区分として計上することとしている。公開草案では、ストック・オプションは、その保有者が株主の地位にあるとはいえないため資本には該当せず、また、返済義務のある本来の負債にも該当しないとの考え方から、中間区分での表示を採用している。この会計処理が適用された場合、現行実務では「負債」に計上している他の新株予約権も中間区分で表示することになると思われる。冒頭の専門委員会は、そのような表示が適切なものかどうかを検討するため設けられる。専門委員会では、その他、既に中間区分に計上されている「少数株主持分」、現行実務では資産・負債に計上されているが、本来、資産・負債の性格を有するかについて疑義が示されている「繰延ヘッジ損益」なども検討の対象としている。

貸借対照表の貸方の表示方法を見直すことは、即ち、資本概念を見直すということであり、投資指標にも大きな影響を与える。例えば、ストック・オプションの場合、ASBJの公開草案ではROEの分母の株主資本には含めないのに対し、米国では株主資本に含めて計上する。そのため、ストック・オプション付与後のROEは、公開草案の処理の方が高くなる。繰延ヘッジ損益についても、例えば、貸付金を金利スワップでヘッジし繰延ヘッジ会計を適用した場合、現行の会計処理では資本の部は変動しない。しかし、仮に繰延ヘッジ損益を資本の部に含めることになった場合、ヘッジをかけることによって資本の部が増減し、ROEが変動することになる。今回とりあげた専門委員会の検討テーマは、まだあまり市場では注目されていないが、投資家にとって重要な影響を及ぼす内容を含んでおり、その検討状況には十分注意をはらっていくべきであろう。

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