TOPIX浮動株化の際のリスク

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2005年01月17日

  • 新谷 理
2005年の株式市場の動きを予測する上でTOPIXの浮動株移行は外せないテーマの一つだろう。詳細は4月頃に東証から発表される予定であるが、簡単に言えば現行の上場株式数をベースとした指数から、上場株式数から親会社やオーナー持分などを除いた浮動株をベースとした指数に変更されることを意味する。日本では長らく子会社上場に代表される形で上場株式と実際に売買される株式数に大きな乖離がある銘柄が数多く存在していたが、遂にこの問題にもメスが入り、指数のウェイトが実際の売買の実態に沿う形で調整されることになったと言うわけである。

しかし株価指数のウェイト調整は指数の値を短期的に引き下げる効果がある。例えばウェイト調整の一例として構成銘柄の入替があるが、2004年10月1日に行われた日経平均の3銘柄入替において100円程度、2000年4月24日に行われた日経平均の30銘柄入替では2500円程度押し下げられている。なぜこのようなことが起こるかといえば、指数に完全に連動する形で運用されているパッシブ投資と、それを狙う投機筋の動きが関係する。

パッシブ投資家の場合、必ず入替前日に除外銘柄を売り新規採用銘柄を買う。投機筋はこれを利用し入替前日までに新規採用される銘柄を買って株価をつり上げる一方で、除外される銘柄を売ってこれらの株価を下げる。入替前日の売買では、パッシブ投資家や指数自身は、投機筋に対して安値で除外銘柄を手放し、高値で新規採用銘柄を買い入れることになる。この無駄が指数の値を短期的に押し下げ、その下落分は投機筋に流れる仕組みである。

およそ17兆と推計されるTOPIX連動資産には我々の年金も含まれており、浮動株化により投機筋に搾取される機会をむざむざと与えるのは大変迷惑な話ではある。しかし指数のメンテナンスは必要悪であり、指数が株式市場の計器としての役割を果たすためには今回の浮動株化の実施は避けて通れない道であろう。TOPIXの下落もパッシブ投資家が払う隠れたコストの一つという所である。

もちろんなすすべもなくコストを支払う必要もない。連動型資産を保有している方、あるいは近々購入を考えている方は今年後半から来年前半までは日経平均連動型に切り替えておいた方がリスクが小さいと思われる。

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