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オッカムの剃刀

2005年01月13日

小倉 正美

簡潔に言い表すこと。それは、いわば、コミュニケーションの要諦。優れたコピーは時代の空気を代弁し、要を得たレポートは物事を推し進める。

こと科学の世界も同じ。数百年の永きにわたり、冗長さを省いた、より簡潔で明快な説明(理論、モデル)を追求すること=「オッカムの剃刀」(※1)が重視されてきた。“現象の説明は、よりシンプルなほうを選べ”、というわけだ。

金融工学を例にとると、Black-Scholesモデルがこれまで30年にわたってオプション理論の中心的役割を果たしているのは、その前提と結果の簡潔さに理由がある。また最近、市場VaR計測において、ヒストリカル法がもてはされるようになったのも、そのシンプルさにある。

ただ、言うは易し、行うは難し。簡潔な表現に辿り着くためには、多くの才能と努力が必要だ。知力・体力のみならず、転んでもただでは起きない粘り強さ・しぶとさが求められる。どんな現象も、もとから単純なものなど、ひとつとしてない。複雑に絡みあいもつれあうなかから本質を見極め、難しくなりがちな表現を、易しく深くそして明るく表現することが求められる。決して、ただ単に簡略化するわけではない。

簡潔な表現。それは、試行錯誤と七転八倒のすえ、見出されるものである。と同時に、それは、時と場所(パラダイム)に左右されるものでもある。 結局、何事においても、“人事を尽くして天命を待つ”。これに尽きるようだ。改めて肝に銘じたき次第である。

(※1) 「オッカムの剃刀」は、14世紀イングランドの神学者ウィリアム・オブ・オッカム(William of Ockham)によって提唱された、科学理論を構築する際の基本指針。「剃刀」は、不要なものを削ぎ落とすことを喩えたもの。

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