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プロ野球を通して日本を見る

2005年01月04日

賀来 景英

多年、トラキチという偏った視角からプロ野球にそれなりの関心を持ち続けて来た人間にとって、過ぐる2004年はショッキングな年であった。ダメトラのだらしなさを肝に銘じられている身は、連覇などもともと期待していないので、ショックは阪神の連覇不成就にはない。日本のプロ野球全体を揺さぶる再編の嵐がここでの念頭にある。筆者が物心ついて以来存続して来た唯一のパ・リーグの球団近鉄(もっとも、球団のフルネームはかっては近鉄パールズといった)は遂に消滅した。丁度、かっての都長銀信託(懐かしい名称)21行のうち、名前も変わらず存続するのは住友信託1行のみであるのに見合うような大変動と映る。また、「たかが選手」の意向が無視出来なくなっている。

「神は細部に宿り給う」と昔の智慧のある人は云った。プロ野球如き些事、といって馬鹿にしてはならない。細部であるプロ野球界の動きが日本全体の動きをよく語っているかもしれないのだ。久方振りの新規参入球団のスポンサーが、いずれもソフト業界に属するのは日本の産業構造の変化に対応し、一抹の危惧とともに軽やかな時代の風をも感じさせるではないか。自己主張を明らかにし、行動する選手会の登場も、多様なステークホルダーの声を容れる伸びやかな意思決定の新しいあり方を告げるものがある。

だが、今のところ球界改革は不徹底にとどまり、先行きの改革の成否も不透明である。ドラフト制度は改まっていないし、コミッショナー制度は機能しないままで日本プロ野球全体のガバナンス機構は曖昧なままだ。これは、10年余の停滞を経て、再生の端緒についたと期待される日本経済の構造改革がまだ薄明のうちにあることと相似形をなす。まだ国民的スポーツの座にあるプロ野球が、真にエキサイティングな、わかりやすい世界に変わることが望まれる。プロ野球についても、日本全体についても、吹き始めた時代変革の風が爽やかに吹き渡ることの期待される新年である。

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