企業の株主還元強化に向けて大変革が始まっている!
2004年12月28日
まず、これまでは、収益が大幅に改善し、過去最大のフリーキャッシュフローが示現されても、企業が言う「負債返済を重視し、過剰債務の圧縮を進める」といった口上に対して、株主(投資家)もある程度の納得性を感じていた。あるいは、今後、1年間くらいに関しては、「減損会計のため・・・」といった企業サイドの言い訳がありえるだろう。ところが、過剰債務の問題が終了し、減損会計の強制適用が終わると、株主還元ができていない企業や成長段階に応じた資本市場政策がなされていない企業は、言い訳ができなくなるだろう。
加えて、(1)持合が崩れ、安定株主の持株比率が低下する一方、外国人など内外機関投資家の持株比率が上昇する中で、彼らから企業に対する株主還元増大に対する要請が強まること、(2)05年の通常国会で会社法が制定され(06年4月以降施行予定)、海外企業による日本企業の買収が容易化されること、(3)そして、実際に、積上がったキャッシュをターゲットにした買収案件や、企業への株主還元強化要請などが、増加する公算が大きいことなど、適切な対応がなされていない企業に対しては、否応なく変化を強要する動きが強まるとみられるからだ。
このような見方が正しいならば、2007年くらいまでの3年くらいが、日本株に対して、最も魅力的な局面になる可能性があろう。なぜなら、収益(収益力)が大幅に好転する中で、株主還元強化に向けて大変革が始まっているとみるからである。極論すれば、大金鉱脈の上に我々は居る可能性がある。それが十分に認識されていない今から、広く認識される3年先くらいまでの期間が最も魅力的な期間と考えられる。
なぜ、3年先なのか。その主因としては、(1)日本経済は2006年後半~07年くらいにデフレを脱却している可能性が高い点である。事業環境の好転で日本企業はROEのさらなる改善、収益・キャッシュフローの拡大を続けるだろう、(2)会社法が施行(06年4月以降)され、大型買収案件(外→内、内→内)が現実に増えてきている、(3)固定資産の減損会計強制適用(06年3月期)も終了し、日本企業のバランスシートの正常化が完了している、などに注目するからである。
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