みなし有価証券の範囲と信託受益権販売業

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2004年12月21日

  • 中田 綾

2004年12月3日に公布された信託業法において、信託受益権販売業が新たに創設された。信託受益権販売業とは、信託受益権の販売またはその代理を行う営業を言い、信託受益権販売業を営む者(個人でも可)は内閣総理大臣の登録を受けなければならない。ただし、信託会社、証券会社、登録金融機関等は、各業界の規制業法で認められる限りにおいてのみ、登録なく信託受益権販売業を営むことができる。例えば、証券会社に関していえば、証取法の許容する範囲において信託受益権販売業を営むことができる。

その際、注意すべき点が、信託受益権販売業者として取扱う商品が証取法上の「みなし有価証券」に該当するか否かであろう。現在、みなし有価証券の範囲は、(1)一定の有価証券に表示されるべき権利で、有価証券が発行されていないもの(登録国債など)、(2)銀行等の貸付債権信託受益権のうち政令で定めるもの(住宅ローン債権など)、(3)外国法人に対する権利で(2)の性格を有するもの、(4)投資事業有限責任組合契約に基づく権利(いわゆる組合型ファンド)、(5)(4)に類する権利、(6)外国法令に基づく権利で(4)に類する権利、(7)その他の金銭債権、となっている(※1)

信託受益権販売業者が取扱う信託受益権からは、証取法で定める有価証券及び上記のみなし有価証券が除かれている。つまり、信託受益権がみなし有価証券に該当する場合は、証取法に基づく投資者保護規制が課せられ、同法に準拠した取扱いが求められる。旧信託業法に定められていた信託受託可能財産の制限が撤廃され、信託ビジネスの拡大が見込まれているが、みなし有価証券に関する規定がどのような影響を及ぼすのか、今後の注目点の一つであろう。

(※1)みなし有価証券の範囲は、2004年6月9日に公布された「証券取引法等の一部を改正する法律」により改正され、(4)~(6)が新たに追加された。みなし有価証券の範囲に関する部分は2004年12月1日に施行されている。

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