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オートクチュールとプレタポルテ

2004年12月10日

新林 浩司

パーティーの招待を受けたあなたは皆の注目を浴びたいが、手持ちの服は流行遅れなので新調したい。さあ、次のどちらを選ぶ?

(A) オートクチュール:自分のためにデザインして仕立ててもらう最高級の一品モノ。しかし超高価。なによりも時間が掛かるため、パーティーまでに間に合うかどうかは微妙。針子を急かして出来栄えが悪くなっては元も子もない。
(B) プレタポルテ:既製服だけど、それなりに高級で種類は豊富。自分に似合うモノを上手にコーディネートすれば、遜色なし。パーティーには充分間に合うし、余ったお金を他にも回せる。

無駄になっても良いからオートクチュールも、というほどスーパーリッチでもない。流行の変化が早く、次回のパーティーに着られる保証が無いとしたら、どうだろう。

流行や嗜好が目まぐるしく変わり、製品ライフサイクルが短命化する世の中に、モノ作りの現場は着実に応えてきた。高品質な製品を低価格かつ短期で供給するため、T型フォードの時代から製造業が取り組んできたのは手工業からの脱却である。熟練者の手に頼らなくても済むように生産管理プロセスを規格化・標準化し、互換性を高めるために専用部品を避け、機能別のモジュール化が進んだ。その結果、製造拠点の海外移転や外注化によるコスト削減も進めやすくなった。高級自動車や時計産業などでは技能者による手作りが今も尊重されるものの、これらはコストや納期に拘らない限定されたマーケットと言える。

さて、情報システム開発においてはどんな状況にあるだろう。情報システムが企業価値を生み出す源泉として重視される中、異業種参入やグローバル化により激化する市場(=パーティー)の変化に応え、時宜にかなう戦略的なサービス(=勝負服)の迅速な投入が求められていることは言うまでもない。意思決定・ビジネス変革のスピードアップとコストダウンが経営の至上命題である以上、従来のオートクチュール型情報システムから既存部品の活用を前提とするプレタポルテ型構築スタイルへのシフトが求められるのは自然な流れである。

巷で最近取り上げられる情報技術キーワードには、エンタープライズ・アーキテクチャーやITIL、ウェブ・サービスなど、開発管理プロセスや提供物の規格化・標準化に関わるものが多い。このことは、システム構築における工業化が本格的に進行していることを示していよう。工業化が進めば、各種製造業が歩んだ道と同じく、ファブレス化やオフショア・アウトソーシング活用の流れは今後も止まらない。従来通りオートクチュールの高級ニッチで勝負するか、それともプレタポルテに的を絞るのか、情報システム会社はポジション選択と体質改善が求められる。

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