期待が集まる中国人留学
2004年12月09日
中国から海外へ留学する学生の数は毎年10万人を超える勢いで急増している。留学生は海外の大学や大学院で習得した知識や技術をもとに現地の外資系企業へ就職する者やベンチャー企業を起こす者など様々であるが、最近の傾向として中国に帰国する例が増えている。
2003年の帰国留学経験者数は約2万人と前年比12.3%の増加となった。1990年代はその数が毎年1万人に満たない状況にあっただけに、優秀な帰国留学経験者の増加は中国経済に少なからぬ影響をもたらしているようだ。
帰国留学経験者は、「海亀派」と言われ、研究機関での先端研究者として迎えられる者、国家中枢機関の主要ポストに就く者、ベンチャー企業を創業する者など、その活躍が大きく期待されている。中国政府は帰国留学経験者の増加を図るため経済面、生活面等で多くの優遇策を講じた。中でも留学人員創業園というインキュベーターを活用してベンチャー企業を起こす者も少なくなく、創業された企業数は5千社以上とも言われる。
中国留学生の就職先として日本企業は他の欧米の企業に比べて人気が薄いという話がある。たとえ実力があっても日本人でないからという理由で昇進できても役員までは望めないという認識があるようだ。 そこで、先ほどの社長に「採用した中国人留学生が優秀な場合、将来は役員として抜擢する可能性があるのですか?」と聞いたところ、社長は「勿論です。」と答えた。どうやら、このベンチャー企業であれば、その留学生にとって働き易い環境が用意されているようだ。
優秀な人材の採用・確保が難しいベンチャー企業にとって、日本人学生が期待できないとすると、この会社のように優秀であれば国籍は問わないという人事方針も選択肢として大切なスタンスではないかと感じさせられた。
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